社会人MBA-技術者編

October 31, 2006

技術軌道

企業戦略は、その企業の現時点でのポジションと将来利用可能な固有の機会の双方から強い強制を受けている。つまり、企業戦略は経路依存性を有しているということである。

この性質は企業にとっては避けがたいことである。なぜなら:
①技術的な知識そのものの制約
②技術的知識を利用する企業のコンピタンスの制約
を受けるからである。
②では、大幅な変化に伴うリスクの管理、学習能力の限界、組織的暗黙知などが挙げられる。たとえ、企業買収によって外部から知識がもたらされたとしても、実践の方法や認識の構造が異なるため、同化させるためには長い時間と多大なコストがかかってしまう。

過去150年間の主要新技術の分析から見た制約では:
①イノベーティブな企業の規模
大企業:化学、自動車、素材加工、航空、エレクトロニクス
小企業:機械、計測器、ソフトウェア
②製品のタイプ
価格志向:材料、大衆消費財
性能志向:医薬品、機械
③イノベーションのタイプ
プロダクト志向:医薬品、機械
プロセス志向:鉄鋼、自動車
④イノベーションの源泉
サプライヤー:農産品、伝統工業品(繊維など)
顧客:計測器、機械、ソフトウェア
組織内:化学、電子機器、運輸、機械、計測器、ソフトウェア
基礎研究:医薬品
⑤自社内でのイノベーションの発生場所
研究開発部門:化学、電子機器
生産管理部門:自動車、バルク素材
設計部門:機械
情報システム部門:金融、流通などのサービス産業

のように要約される。

・・・技術的変化の源とその変化の方向は各産業セクターにより恒常的にことなるものである。

イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメント
pp135-138(第五章)

photo (c) Mori

Labels:


October 29, 2006

様々な経営者

ビジネススクールでは様々な企業をケースとして扱う。当然企業には経営者が存在し、その色を出している場合もあれば、色が薄い場合もある。業種が異なれば、マネージの仕方も異なるし、従業員の雇い方もことなってくる。規模が異なれば、また、次第に規模が大きくなるに連れて、組織の形態も変更していくが、その仕方も様々である。

では、稼ぐ経営者はどういう経営者か?

あるマーケット(それが既存であろうがなかろうが)を釣堀として考える。

普通の経営者は与えられた時間内に、数多くの魚を釣ろうとする。餌を変えたり、釣るポイントを変えたり、はたまた、魚が集まる時間帯、場所を測定したり、様々に工夫する。釣るということに効率を高める努力をする。着実に少しづつではあるが、成果に結びつく。この場合、リスクは少ないといえる。分析の結果、魚事態の数が少ないのでは?と判断したら別の釣堀へ移動できるからである。

少しリスクを背負った経営者は、効率を高めるなどの時間を無駄と考え、その釣堀ごと購入してしまう。結局はその釣堀の魚をすべて手に入れることができる。リスクを背負う分、リターンも期待できる。

金融工学や知的資産を評価する際に用いられるアプローチのひとつである、リアルオプション(この場合コールオプションとすると)では、ボラティリティが高いと資産価値が高くなる、と説明されている。

そして、稼ぐ経営者は、釣堀を作るのである。何匹の魚を入れるかは自由である。
そのかわり、利用者がいない、という最も高いリスクを背負うことになるが・・・。

・・・いずれにせよ、経営者は稼がなくてはならない使命にある、あなたが天使であっても・・・。(ドラッカー)

photo (c) Mori


October 28, 2006

イノベーションから得られる利益を専有する

技術的なリーダーシップは、それ自体が経済的利益にを約束しない。この約束を履行する要因(技術に対する投資から利益を確保する能力)は、①技術的な強みを商業的に製品、プロセスへ翻訳する能力、②その強みを模倣者から守る能力、である。

商業的利益を確保するために、この能力に影響を与える9つの要因は:

①企業秘密:完全な保護は困難
例)リバース・エンジニアリング、専門家コミュニティ、技術者の移籍
②蓄積された暗黙知
長く持続する、デザイン技術が典型
③リード・タイムとアフターサービス
特にプロダクト・イノベーションの主要な保護策。アフターサービスは顧客からのフィードバックを加速する。
④学習曲線:コストの引き下げと、その企業に特化した強力な暗黙知の蓄積
⑤補完的資産:生産や品質管理、マーケティング、アフターケア等の能力
⑥製品の複雑性
例)メインフレーム・コンピュータ、大型民間航空機
⑦規格・標準:インターネット経済における市場拡大の必須要件。根本的に新しい技術が採用される際には、常に生じていた。
例)鉄道線路の軌間幅、電気の交流・直流、HDTV
競合企業は、切換コストを下げるような(下位互換性)“進化的戦略”もしくは、顧客が切換コストを厭わないような“革新的戦略”で対抗・
⑧先駆的で革新的な新製品:大衆消費市場では、革新的な商品は必ずしも当初評価されない。成功者は、ビジョンを持ち忍耐強く柔軟性のある“初期の参入者”
⑨特許保護の強さ:
プロセスよりプロダクト・イノベーションの保護に有効
ソフトウェア、ビジネスメソッド、生物特許、保護の範囲などで論争

企業はイノベーティブなリードを守るために、これらの要因のうちのいくつかを利用することができる。
これらのことを市場と国家のポジション、競争環境を鑑み実行しなければならない。
(第四章総括)

イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメントpp122-134

photo (c) Maco

Labels:


October 26, 2006

企業では誰が偉いのか

企業では誰が偉いのであろうか。経営者なのか、資金を提供してくれる株主なのであろうか、信頼してくれる顧客なのか、従業員なのか・・・。
はたまた、企業を支える製品、サービスの開発者なのか、販売員なのか。

別の視点から考えたい。
私は設計者であるが、この仕事(設計業務)は所詮、舞台で演じている演者の演技でしかないと考えている。
演者であるからには、最高の演技を顧客に提供する。そのためには、練習も気の済むまで行う。演技指導も受けるだろう。共演者とも協議し、監督の思い描く舞台を協働するであろう。
まさか、自分がアップで撮影されるタイミングにアカデミー狙いの涙モノは見せないだろう。全体の調和が崩れることを嫌うためだ。
これらは、あくまで舞台があっての話である。演じやすい舞台、必ず成功するからくり、適切な照明・・・舞台は整っていることが前提である。その影には、いつも同じように演者が演技できるように舞台を整えてくださる人がいる。

製造業で言えば、事故をシュートする人より、事故を起こさないように日々取り組んでいる人であると言えよう。
経営者はそのような影の人を探しだし、必ず光を当てなくてはならない。建前のコンプライアンス、CSR、形骸化した表彰制度は、もう要らない。真面目に努力している従業員が報われるシステムを構築しなくては、その企業の理念に従業員は共鳴しないし、顧客満足は得られない。
青臭いことは分かっている。(つたない経験かもしれないが)これまの業務経験、そしてビジネススクールでの学術的、人的な資源から帰結される私の結論である。

今後、栄える企業は、経済的競争から人道的競争を勝ち行く企業である。

企業で言えば、舞台を整えてくださる影の人がいる。
毎朝、出社して花壇が綺麗に整えてある。木々はいつの季節も整えられ、通路にはごみひとつ落ちていない。駐車場はいつも止めやすいように整備されている。廊下は綺麗に清掃され、タバコの灰など落ちているはずがない。

明日出勤しても同じであろう。

それらが、彼らの仕事である、といえばそうかもしれない。
しかし、彼らの仕事に一日でも不備があれば、企業データが持ち出されるかもしれない。来客した顧客は嫌悪感を示すかもしれない。怪我をする従業員が出るかもしれない。製造業での怪我は、甚大なものである。

開発者の仕事に一日不備があっても、最終製品が出荷されない限り問題はない。
研究が一日遅れたと言っても、特許出願日でもなければ、取り戻すことは容易である。
社長が一日休んだところで、売上は下がらない。

・・・彼らが偉いんだとは言わない。だが、毎日のことに感謝したい。ありがとう。


October 25, 2006

たらこキューピー

たらこキューピーとは・・・
「キューピーあえるパスタソースたらこのCMに登場する、たらこの着ぐるみをかぶったようなキューピーのこと。2004年秋、同製品のリニューアルを知らせるキャラクターとして誕生した。CMソングは、9月初旬にオリコンCDシングルに初登場し第2位を記録。」(日経MM通信,38,2006.10,p4)

日経収集店舗によるPOSデータによると、来店千人当たり販売金額(千人の客が来店したときに、その商品がいくら売れたかを示す)は2004年8月時点で約20円、同年10月にCMがはじまり、2006年8月時点で同金額は100円強で、約4~5倍の躍進となっている。

キューピーの製品担当は複雑な気持ちではないかと推測する。当然、企業の売り上げが増加することは好ましいことである。商品力、流通力が作用し売り上げを導いているのであれば、買いたい商品が店に並んでいないことは顧客機会を損失するし、商品力がないものは、注意を引かない、いや、検索すらしないであろう。この場合はどうであろうか。「特定のキャラクターが一躍脚光を浴びて社会的なブームになる例が弊社ではなく(キューピー)」と戸惑っている面もある。

このようなコモディティ化した商品の顧客の教育は非常に難しい。お金がかかるのである。この例でもCM開始からすぐに効果が現れた訳ではない。当然、キューピーのマーケット担当は、顧客と適切なコミュニケーションを図るため広告を打ったであろう。

たらこキューピーに人気が高まり過ぎると商品を伝える顧客とのコミュニケーションが薄れてしまう。ハリウッド俳優は通常TVCMへ出演しない。宣伝主が商品ブランドの影が薄れてしまうためである。日本でハリウッド俳優が出演するCMは契約の際に日本限定での放映、という条項を入れるのが通常である。日本の場合は、俳優がCMへ出演する免疫ができている背景もある。これは、商品が影になってしまい、「あれ何やった?ほら○○がでているCMのやつ?」てな具合である。

・・・ところで、あえるパスタソースをご存知ですか?

参考:日経MM通信,38,2006.10,pp4-5


October 24, 2006

開発現場では何が必要か

開発現場で必要なものは・・・?経験、スキル、それとも・・・度胸?

近年、商品のサイクルタイムが短くなり、開発スパンもそれにつられ、短くなっている。開発の案件やアイデアもすぐに実行に移せるものを選びがちである。しかしながら、そのアイデアは、製品のパフォーマンスを少ししか改良してくれない。不連続な展開はごくわずかである。
私は、電機メーカーの設計部に属している。
昔は電機の設計部といえば「花形」部署と呼ばれていたそうであるが、研究、開発、量産化、さらには顧客との折衝に参画する設計部は独特の部署で、よく言えば、プロフィットセンター、悪く言えば、何でも屋、便利屋である。リストラが進み、ベテランが少なくなっている現在では、猫の手も借りたい現状である。そのような中、ビジネススクールに通っているのであるから、全くの酔狂としか言いようがない。マネージャーへの感謝は言い尽くせない。

技術屋は妥協をしない。研究者も同様である。が、企業である以上タイムリミットが存在する。時間が限りなくあればよい、と言うものではないが、あったことにこしたことはない。短縮されたサイクルタイムへ対応するには、長期的スパンの開発も短期的スパンの開発も効率よく資源配分して行わなくてはならない。
かといって、次に商品化する時間を稼ぐために、少しの改良、改善で短時間で開発を終わらせることも、設計者としては保険になり安心するが(いわゆる中途半端な状態)、獲得できうる利益の幾分かをその保険代に使用しているので、商品化の利益率が低下してしまう。

いわゆる設計者のジレンマである。マーケッターは開発期間が長ければ、「長すぎて待てない」、短ければ、「それは新商品として打ち出せない」というだろう。

開発行為は博打である。10年できないかもしれないし、明日できるかもしれない。いくら、PCが発達しようともやってみなければわからないことは数多くある。
そのなかで、必要なことは忍耐である。短期間においては「ギリギリまで待つ忍耐」、長期間においては、この実験のなかに何かがあると「続行し、(メカニズムなどを把握するのに)待つ忍耐」である。そして、決して、ストロー型の開発を行わないことである。

・・・「忍耐こそ、このうえなく真実の勇気なり」(ミルトン

photo(c) Mori

Labels:


October 23, 2006

ソフトバンク料金体系見直し

孫正義社長は「複雑な携帯の料金体系を分かりやすくしたかった」と大幅値下げに踏み切った(西日本新聞Webより)。私は、J-Phoneのころから同社(?表現が悪いが)の携帯電話を使用している。社会人の学生になりKDDIの学割が非常に魅力的なサービスであった。ナンバーポータビリティまでは動きが取れないので、様子見であったがが、ボーダーフォンがソフトバンクになり、KDDIの優勢が伝えられている中、ナンバーポータビリティが可能になったが、利用しなかった。私は次の2つの発表を待っていた(と言ってもみんなこう言ってたが・・・)。

①ソフトバンクの株式を購入すれば、携帯電話使用に関して優待事項が含まれる(であろう)。
②料金体系が見直される(であろう)

(①はわからないが②で)ここまで、安くなるとは思わなかったが、しばらく、ソフトバンクの携帯を持ち続けることにする。

ナンバーポータビリティについては、結局はNTTドコモの勝ちだろう。
もし、私が、NTTドコモの経営者なら、ナンバーポータビリティがはじまるまでの時間を稼ぎ、その間に、顧客をサービスの巣へ絡みつかせただろう。ナンバーポータビリティはナンバーだけである。メールアドレス、各種サービスを移行しないことに意味がある。一般の顧客が、スイッチしにくいからである。PCを変更してもメールアドレスが変わらない、種々のサイトへのアクセス(IDなど)も変わらないのに、おかしな話である。

・・・自動車に携帯電話が設置され、現在の価格競争の予兆まで数十年。以外に長いライフサイクルである。いや、離れた場所で話ができる(固定電話も含めて)と定義すると、まだまだなのかも知れない。

photo(c) Mori


October 22, 2006

競争相手にどのように対抗するか

企業がイノベーション戦略を策定する上で、どのような質問に答えなくてはならないだろうか?それは次の2つの区分される。

①競合企業がどのような技術開発を行っているか
②どのようにすれば競合企業のイノベーションを吸収できるか

であり、①の知識は情報収集活動、②はベンチマークや学習などの活動が必要とされる。公開される情報源はアニュアルレポート、特許、論文および報道機関の分析である。日本で有名なのは、MITが行なった「世界の製造業の製造方式に関する客観的な比較研究」であろう。しかし、典型的な経営陣は懐疑的であり、「結局公の情報からはわからないだろう?」と正しくない質問を挙げる。または経営陣は肯定的で「それを、うちでもやってみよう」と正しくない答えを選択する。
企業は変化し続けることでしか生き残ることができない、とは、参考図書のひとつの論理である。と同時に「銀の弾丸」も存在しないことも含まれる。日本が比較的優位にある技術的なことでさえ、その企業の研究・開発部門がほとんど解明するであろうが、ノウハウまではわからない。
逆に、競合他社が自社のことすべてを解明しているわけではない。わかってしまえば、他社が考える自社の「ブラックボックス」も自社にとっては何もしていないことがよくある。技術的に優れているからといって、その企業の利益が高いとは限らない。優れたinventionが優れたinnovationであるとは限らない。「模倣には、オリジナルのイノベーションのコストの60-70%のコストがかかり、完成するまで3年程度の時間がかかる」を肯定的に受け止めるのか、否定的に受け止めるかはその企業の戦略による。

・・・<技術的に劣っているので販売が伸びないんだ>は、販売員の敗北宣言であり、<技術的に優れているのにどうして売れないんだ>は技術者の傲慢である。

イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメントpp117-122

photo(c) Mori


October 20, 2006

プロ野球的MBA

MBAと言えば・・・一般にはアメリカの大学が思い起こされるであろう。ハーバード、スタンフォード、MITスローン・・・。それらが技術経営分野で秀でているかはわからないが、多くの優秀な人材を輩出していることは確かである。でないと、MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方のようなアンチテーゼが生まれる訳はない。

日本でも専門職大学院を始め、大学院の設立が盛んである。MBAは進学する人の目的により異なるが、進学する前に何を学べばよいかは十人十色である。日本の大学院や通信教育を経て、アメリカの大学院へ挑戦する人もいれば、予備校を経て進学に挑戦する人もいる。

プロ野球的MBAとは前者である。おそらく、社会人で通学している私の経験から、これは、当該大学院のコース、例えば、ファイナンス、マーケティング、MOTなどのなかでも、2コース程度に明るく、プラスファイナンスを理解していることが条件であろう。有名校へ進学してくる学生は学歴も高い。アメリカの大学では、日本と異なり、一般的に学生はよく学ぶ。彼ら(彼女ら)が卒業後、業務経験を経て進学してくるのであるから、色も濃い。ましてや、外国人枠(設定しているところでは)で合格しなければならないのだから・・・。

2コースの組合せはMOTと何か、ではないかと考えている。少なくとも日本のお家芸は理解しているほうがいいし、日本は文系、理系という悪習慣があり、文系は数学を避け、理系は数字で考えすぎる嫌いがある。

いわゆるプロ野球的MBAは日本で十分に実力を発揮してから挑戦するというものである。
というより、ここまで研究すれば、(当人の課題をクリアしたという点で)アメリカへ行く学術的価値はないだろう。

しかし、人的資源が目的であれば、試験に受かる方法を研究したほうがいいかもしれない。
目的によることは言うまでもない。

・・・一度ハーバードスタイルの講義を受けてしまったら、あのマネージされている感覚はたまらない。

photo(c) Mori


October 19, 2006

「Googleブログ検索」を提供開始

グーグルがブログ検索を提供開始した。Googleブログ検索
「検索したい言葉を入力して「ブログ検索」をクリックするだけで、ホットな話題を追いかけたり、人の意見を集めたりすることができます。」との発表である。最近書かれたブログだけを見たければ、検索結果左上の「1時間以内」や「1日以内」をクリックして検索できるらしい。これにより、情報のホットさはGoogle Trendsにより確認でき、何を考えているか、また、反応はブログ検索で確認できるようになった。

・・・便利なものである。


ソニー業績を下方修正

ソニーが業績の下方修正を行なった。主な原因は、リチウムイオン電池の回収によるものである。この事故については、種々のことが推測されるが、電池技術を把握しなければ「画竜点睛を欠く」ことになるだろう。

そもそも乾電池、充電池を含め、ナショナルイ・ノベーションシステムから考察すると、電池技術は日本のお家芸である。かつて、乾電池における有害物質(水銀や鉛)の低減、廃止の際も、日本の主要なメーカーが海外へ技術指導を行なっている。そもそも、回収対象のリチウムイオン電池はソニーが開発したと言ってもよい。私は学生の頃半導体を研究していたが、その様子が、(確か)”固体物理”という雑誌に掲載され、運悪く、ゼミで説明の順番で当たってしまったため、よく覚えている。

電池の設計や開発は非常に地道であり、日のあたらない業務である。利益率も高くない。アップルを研究し、iPodに使用されている技術を紹介する記事の中でも、充電池を記載していない(MITチームの調査研究によるグローバル企業の成功戦略p100)ほど目立つことはない(!?)。かといって、サイエンスで研究が終了している訳でもない。松下や三洋など大手企業だからこそ操業し続けることができているのではないかと考えてしまう。

いずれにせよ、今後、電池というカテゴリーで生産される商品は数十年なくなることはないにも関わらず、利益率の低さや作業の地道さからコスト削減の対象になることも大いに考えられる。
こういった技術の分野では、電池に関わらず、ベテランが必要である。ベテランは超えてはいけない線をその豊富な経験から熟知している。しかし、残念なことにこういったベテランから先にコスト削減の対象になることが現実である。

今回の回収に関しても、次々に対象が広がっていった経緯がある。例えば、あるロットで欠陥があれば、広がることはない。当該企業が範囲を指定できるからである。「工程における金属の混入」に関してもキープしているサンプルを調査すれば、範囲を指定することは難しくはない。本当のところはわからない。

これらのことと、最近のソニーの状況を考え合わせると、「ソニータイム」はハインリッヒに魅入られていたのだろうか・・・。

・・・この日本特有の技術のほころびは必然なのか、偶然なのか。。。

参考:『一橋ビジネスレビュー』東洋経済新報社 2004年秋号
photo(c) Mori


October 18, 2006

iPod nano (PRODUCT) RED

「RED)プロジェクトはU2のリードシンガー、BonoとBobby Shriverによって創設されたもので、世界の名だたる企業が同ブランドの製品を特別に作ることで、アフリカにおけるエイズとの闘いに、ビジネスが関わっていくことを趣旨としています。これらの製品の収益金の一部は直接「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」(世界基金)に寄付され、HIV/エイズに罹患したアフリカの女性や子供たちのためのプログラムに資金を提供することになります。」

アップルがiPod nano (PRODUCT) REDを発表した。最近、nano、shuffleの世代交代品を発表し、年末に向けて、更に・・・である。どうも、アップルの携帯型音楽プレーヤーは着せ替えらしい。価格が手ごろであるため、すでに、iPodのいずれかの商品を購入している顧客にとっても、十分な購入動機となる。さらに、今回のレッドは、上記のような内容となっている。
短い商品サイクル、コンセプトの塗り替え・・・高級な携帯音楽プレーヤーを購入し、長く使う、という考えは古いのかもしれない。
確かに、既存の技術を集合させて商品を販売するには、技術的なコンセプトは、デザインなどの補完的資産の前では、陳腐化しているのかもしれない。今後、この販売戦略を続けると、顧客は最新でなければ、格好が悪いかもしれない・・・と思ってしまうだろう。

・・・着せ替えにするには、着せ替えるほど商品を排出しなければならない。

iPod nano (PRODUCT) RED


October 16, 2006

他国のイノベーション・システムから学ぶ

企業は少なくとも以下の3つの理由から、自らが埋め込まれている国以外のイノベーション・システム・・・<特に成長している強力なシステム>・・・における、技術、生産および組織の能力の発展を監視し、そこから何かを学ぶべきである。

①競合企業を生む源泉の警戒
韓国や台湾などの東アジアの国々→日本を越える強力なイノベーション・システム
チェコやハンガリー→ロシア帝国の崩壊による強力なイノベーション・システム
②自国や自社のシステムを改善するための源泉
ただし、イノベーションによる効率性は、国益やイデオロギーと結びつく傾向が強く、事実と信念を分離することが難しい。
英語とアングロサクソン型の事例による強い支配(ビジネス関連の書物、教育)
③他国の技術そのものからの具体的な利益
ヨーロッパ企業は北米や他のヨーロッパの国から学ぶより、日本から学ぶことが困難であると気づいている。→地理的・言語的・文化的な障壁;非公式な専門家ネットワークへの参加の障壁

・・・「敵を知り、己を知らば、百戦危うからず」である。

イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメントpp115-117

photo(c) Mori

Labels:


October 15, 2006

背景を考えよ

ipodは何故成功したか?
主題を考える上で、最良のケースだと考えている。
設計、音楽データベースへのアクセスなど重要度を算出することは不可能であろう。ならば、従来型の思考へ警鐘をならそう。
ipodの機能面に着目した思考は、従来の日本の製造業の思考である。
「洗練されたデザイン」「iTunes」、確かに、これらは重要度へ寄与されるであろう。これらの背景には「良いモノは売れるはずだ」という旧来の背景がある。オープンに設計を行なう技術者はこの思考を忘れてはならないが、その技術者を使用する立場にある使用者は「利益を出す」ことが第一目的であって、「良いモノを作る」ことは副次的な理由であろう。時に、独占による超過利潤を得るために、競合企業と合併する誘惑に駆られることもあるが、競争環境が存在しないと、企業がイノベーションを通じたグローバル・マーケットでの競争に適合できなくなってしまう恐れもある。

組織は戦略に従ってきたが、テクノロジーは組織の変更を可能にしてしまった。新たなデジタル技術のおかげで、たとえ生産工程の各段階が世界中の独立企業のもとの分散していても、迅速に、円滑に調整ができるようになってしまった。ipodにおけるハードディスク、ディスクドライブ・スピンドル、コアコンプレッサ、ファイヤーワイヤー、など、アップルは既存の他社製の構成品を組み合わせた製品を考案したのである。意図的でないにしろ、そのようなビジネスの流れも存在していることを認識することが重要である。
これらの、サブ・システムをカイゼンしたところで(アップルよりもよいモノを製造したところで)、利益に繋がるだろうか?
ベンチャーキャピタルがスタートアップの企業に融資する際、最も考慮に入れるのは、「経営」がしっかりしているかである。その企業が持っている技術が一番にくることはない。所詮、技術は代替されるものであるし、模倣されるものであるからである。匠の技術を求めている顧客にモノを売るには、企業ではコストがかかりすぎる。その製品、商品毎に利益の抽出できるビジネス・システムを構築していくことが使用者の使命である。

・・・技術者によいモノを作れ、というしか能のない使用者は削減されるべきコストである。また、よいモノを作ったから利益が抽出されたんだ、という技術者は圧縮されるべきコストである。

イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメントp109
MITチームの調査研究によるグローバル企業の成功戦略pp95-100

photo(c) Mori


October 14, 2006

イノベーションの速度と方向に影響を与える主要因

イノベーションがどのように(どれぐらいのスピードで)進むのか、ベクトルはどの方向を向いているのか、イノベーションが運動する主体であれば、どのような因子が寄与率がたかいのであろうか?ティッドらは、国ごとに異なる5つの主要因を:
①国内の市場におけるインセンティブ
②国内の市場におけるプレッシャー
③企業の製造能力
④企業の研究能力
⑤金融、マネジメント、コーポレート・ガバナンスの制度
としている。

ここで、研究能力を取り上げると、企業の研究開発部門は国の基礎研究活動、なかでも大学の知識や技能・サポートなどを積極的に探し求めるものである。が、企業が求める知識は主として暗黙的な知識であるため、言葉や距離は産学連携にとって現実的な障壁になる。このため、企業は一般的に国内大学との交流を好むのである。TLOが設置され活動が本格化しているが、やはり、伝統的に付き合いのある大学、サプライヤーとの協働は、利得が大きい。企業でも大企業、中小企業では、取り組みが・・・いや、企業毎に取り組みが異なることに加えて、各大学との契約がまちまちであれば、やはり、伝統的に付き合いのある大学との連携が成果に結びつきやすい。これは、各国での特徴が様々であるため、一般解が存在しない。
何か解があるだろうと、銀の弾丸を探す、そして適用してきた過去の反省から、「一般解は存在しないのだ」と特殊解を探索することに方向付けるだけでも、大きな違いがある。

・・・MBAは会社を滅ぼすのだろうか。

イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメントpp108-114
参考までに:MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方

photo(c) Maco

Labels:


October 13, 2006

国のイノベーションシステム

企業のイノベーション戦略に大きな影響を及ぼす環境要因に国のイノベーション・システムがある。企業は国のイノベーション・システムの中に埋め込まれており、国のイノベーション・システムは、企業が機会や脅威の対応する際の選択のある程度規定する。つまり、イノベーション活動の本国依存とは:

○グローバル企業であっても、イノベーション戦略を立案・実行する際の戦略的なスキルや経験は、主として本国に頼っている。
○国の技術的な強みや弱みは、その国の主要企業に反映されている。
○日本の強みと弱みのパターン(産業)は、米国の強みと弱みのパターンのほぼ逆である。

などである。これらを支持する調査は、民間企業研究費の対GDP比率の推移が示されており、概略は:

○欧州と日本が米国に徐々に追いついたという認識は誤りで、スイスは、常にリーダー集団の一員であったこと。
○ドイツと日本は、1971年時点で既に米国を逆転しており、1980年代はリードを広げた。しかし、1980年代後半には再び米国が追い上げていること。
○北欧諸国は、継続的に上昇している、成長競争には参加していない国もあること。
○1960年代に世界をリードしていた英蘭は、長期低迷していること。
○ある国の企業の研究開発比率上昇と、その国の産業構造との間に密接な関係はないこと。
○フィンランドとカナダはいずれも天然資源に大きく依存しているが、上昇率は大きく異なること。

である。

・・・国が違えば得意技も異なるのである。

イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメントpp105-107

photo(c)Maco

Labels:


October 12, 2006

混沌のなかでのマネジメント

「物質が存在すると周囲の空間が曲がり、その曲がった空間の中で物質は互いに近づくような運動をする」とは、ご存知の通り、重力の概念である。ある回帰式があり、その誤差項にはどのような因子が含まれているかはわからない。かといって、難解な相対性理論(特殊の方)もGPSの時間補正には欠かせない。文化物も守る人間がいなければ、現代に見ることはできない。
科学が技術を誘発することもあれば、市場が技術を促すこともある。重力の概念がわかったからといって、相対性理論(一般の方)が100%正しいとは限らない。

マネジメントとはそのような混沌とした環境で組織のプロセス、現在のポジション、利用可能な技術軌道の視点から最適解を導き、維持管理していく行為ではなかろうか。

例えば、ダイナミック・ケイパビリティ:
競争優位の源泉に関する見方は、絶えず変化しつづける環境が持つ性格を表現しており、戦略的マネジメントが変化し続ける環境に対応するために果たす役割を表現している。

・・・動的な変化と企業の学習が重要といえる。


イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメントp99-100

*数度トライしましたが、今日は画像がBloggerにアップできませんでした。残念!

Labels:


October 11, 2006

ポーターの戦略論

マイケル・ポーターは企業戦略におけるイノベーションの分析に大きな貢献を果たした。産業界の競争を駆動する<5つの力>と技術との、また企業が行わなければならないいくつかの<基本戦略>からの選択と技術との明示的な関係付けを行った。

産業界の競争を駆動する5つの力とは:
サプライヤー(原料・部品・設備)との関係、買い手との関係、新規参入者、代替製品、既存企業間の競争状況

4種類の基本戦略とは:
コスト・リーダーシップ戦略、製品の差別化戦略、コスト集中戦略、差別化集中戦略

である。
さらには、2種類の市場戦略として、イノベーションのリーダーを目指す戦略とイノベーションの追随者戦略を示している。プロダクト、プロセスの開発と4種類の基本戦略とのフレームが基本技術戦略となる。
結局のところ、「企業の本国の環境がその企業の世界市場におけるイノベーション戦略に大きな影響を及ぼすこと」を明らかにした。さらに言うならば、技術の軌道とそれを活用する企業固有の技術的・組織的コンピタンスを過小評価している。このことは、例えば、技術の融合により、障壁がトンネル効果のようにすり抜けてしまうようなことである。
いわゆる、ここで取り扱われるのは静的な産業構造である。

・・・高いレベルの不確実性を扱うことへの特殊解、もしくは一般解を導くことが現代の課題といえる。


イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメントpp92-98
参考までに:競争の戦略

photo © Mori

Labels:


October 10, 2006

マネジメントの流行

規模拡大、リストラ、構造改革、コア・コンピタンス、トータル・クオリティ・マネジメント・・・マネジメントには流行があるようであるが、複雑で変化する状況においては、マネジメントを成功に導くための簡単なレシピなど存在しない。

サクセス・ストーリーを疑え!

これは、サクセス・ストーリーを著した書籍や著者を言っているのではない。
例えば:
○ホンダの成功に関する説明
「特殊な市場セグメントに慎重にターゲットを定め、設備投資と生産方法の学習を通じたコスト削減」(ボストン・コンサルティング)、「予期しないシグナルに対応できる市場戦略の柔軟性と、高品質な製品設計」(リチャード・パスカル)

○イノベーションの実現に寄与するリンケージ
大学の研究と企業の製品開発のリンケージ(製薬業界の場合)、さらに、重点分野がケミストリーからバイ-オへと大きく変化。
製品開発と製造とサプライチェーンのリンケージ 自動車業界の場合)
さらに、IT技術が製品開発やSCMに深く関わるようになりつつある。

など、要素を発見している主張に対しては、常にその主張のもとになっている証拠に立ち帰って正確に調べるべきである。新たなマネジメントを導入しようとしている企業の者が調べれることができたなら、どの部分が当該企業にとって有用な要素なのかが把握しやすい。
これは、MBAに限らず、必要な研究姿勢である。理系の場合では、ペーパーに書かれていることを再現実験したりすることに相当するかもしれない。

・・・流行っている服が似合うとは限らない。

イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメントpp91-92.

photo © Maco

Labels:


October 9, 2006

合理的 or 漸進的戦略?

<合理的>戦略なのか<漸進的>戦略なのかは、長く論争で用いられている。これは、企業が複雑で急速に変化しつつある競争環境の中で実際の決定を下す際には、意味を失うだろう。合理的戦略の特徴をよく具現しているのはSWOT分析である。漸進的戦略の・・・、結論を先に言おう。<選択>か<実施>の間に存在する違いである。このどちらかを選択するのではなく、状況に合わせて配分するのである。
合理主義者と漸進主義者の共通点を見出すことで、マネジメントの含意を述べると:

○企業戦略の立案とは、分析と経験を基に、複雑性や変化に対してより効果的に対処する方法を学習する過程である。
○不確実性を前提として、考え得る将来のトレンドの影響を調査する。
○幅広い参加者と、非公式のコミュニケーション・チャネルを確保する。
○様々な情報源の利用、物事を疑ってみることを推奨する。
○新たな、予期しない兆候が現れた場合には、戦略変更を当然とする
○成功したマネジメントを完全に再現することは決してできない。
○成功に寄与した必要要素の、全てを見つけだすことはできない。
○再現しようとしたときには既に、状況は元のままではない。

・・・ということは、各企業(組織)の暗黙知が重要である、と言える。

イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメントpp85-92

photo © Mori

Labels:


October 8, 2006

Taking a strategic Approach

「ビジネスにおける成功は、新たな知識を創造し、その知識に基づいて素早くかつ思慮深く行動する能力をもつことができるかどうかに大きく依存している。戦略的思考はビジネスを成功に導くための必要条件ではあるが、私はそれが過大評価されていると思っている。もしあなたが、素晴らしい二輪車エンジンを設計する方法を知っているならば、私はたった数日間で、あなたが戦略について知るべきことのすべてを教えてあげられるだろう。一方、たとえあなたが戦略についての博士号を持っているとしても、数年間働くだけで素晴らしい新二輪車エンジンを設計する能力が得られるとは思わない。」(リチャード・ラメルト, California Management Review, 38, 110, 1996, 米国の二輪車市場におけるホンダの成功原因をめぐる継続的な論争より)

上記は、戦略的にアプローチする重要性を支持している。イノベーション戦略において、成功する秘訣、ツールはないかもしれないが根本的には、経験や分析から学習する能力が重要である。しかしながら、企業のイノベーション戦略が備えるべき基本的要素は考えられる。
それは、以下の3つの要素である(俗に言う3Pとしよう):

Position(市場と国家のポジション)
Path(技術の軌道)
Process(組織のプロセス)

である。すなわち:

①自社の競合企業と比較したポジション:製品やプロセス、技術などかの観点から、また自社が埋め込まれている国のイノベーション・システムの観点からポジションを比較する。
②自社に開かれている技術軌道:これまでに蓄積してきたコンピタンスと、それらによって利用可能となる新たな機会から、将来の軌道が導かれる。
③自社が従うべき組織的なプロセス:職務上の機能や部門の境界を越えて、戦略的な学習を統合するために、企業戦略を立案する。

・・・やはり、備えることが好機を誘発する。

イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメントpp81-85.

Labels:


October 7, 2006

イノベーションをマネージする

月の表面は綺麗に見えても、暗い部分も月は月である。光によって様々に映し出される。イノベーションも同じような側面がある。革新的な部分に注目してしまう嫌いがあるが、暗くとも「学習」という地道な活動なくしては結実を迎えない(ちなみに、今日の月は三日月ではありません)。おそらく、これまで述べてきたイノベーションの中核をなすものが、①シグナルの処理、②戦略立案、③リソースの調達および④実行、のイノベーション・プロセスであるならば、マネージしなければならない重要な事項は以下である。

●戦略
●効果的な実行メカニズム
●イノベーションを支援する組織内の環境
●外部との効果的なリンケージ

そして、イノベーション・プロセスとの関係は:



となる。
従って、イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメントにおいては、これらの説明がなされており、イノベーションについての中核をなしていることになる。

そして、考察していくべき重要なテーマは:
○戦略的アプローチを採用し、イノベーションとそのマネジメントの問題に取り組む。
○効果的な実行メカニズムと構造を発展させ、利用する。
○イノベーションを支援するような組織内の環境を発展させ、拡大していく。
○効果的な外部とのリンケージを構築し、維持する。

・・・企業において、イノベーションを成功させるのは、一般解ではなく、特殊解である。

photo © Morio Higashida 月世界への招待より

Labels:


October 6, 2006

ビジネススクールでの資産とは

一般的に、資産は有形、無形に区別される。人が持つ資産もそうであろう。今回は、ビジネス・スクールでの資産を考える。教育への投資が最もリターンが大きいことは言うまでもない。
さて、「ビジネス・スクールで何を学んでいるのか?」とよく聞かれる。ビジネスと言えども、社会科学なので、アプローチは理系の時とさほど変わらない。強いて言えば「ビジネスで失敗しないマネージメント」を学んでいるのだろう。
また、「ビジネス・スクールに入学する前に勉強しておかなければならないことは?」とも聞かれるが、入学する目的により異なるため、「どうして、ビジネス・スクールへ入りたいの?」と聞いてから、学友を例に回答している(一応、誰にでも論理は学んでおいたほうがいいよ、とは答えている)。
私は、理系だったため、少しは入学前に準備したが、さほど、役に立ったとは思えない。ビジネス・スクールではグループワークや講義の中でのディスカッションが盛んだが、経験から言えることは、経営学の基礎的なことは、通勤、または通学の際に、それなりの書籍を読めば十分である(入学前に試験勉強しているのだから・・・)。大切なことは:

あなたは何のプロフェッショナルですか? ということである。

この分野に関しては、誰よりも詳しい、また体験として有している、ことが大切である。何についても詳しい人などいない。批判覚悟で書くならば、ファイナンスの先生でさえ、研究開発成果の価値評価はできるかもしれないが、イノベーションについては造詣が浅いであろう。

さらには、入学前の少しの学習は、入学後の資産とはならない。入学までにそれぞれの業務で、プロフェッショナルであることが、なによりの資産である。付け焼刃は通用しない。

・・・生兵法は怪我のもとである。

photo © Mori


October 4, 2006

成功したイノベーション・マネージメントについて分かっていること

過去の調査から、イノベーションの成功に簡単な答えなどなく、組織の規模やタイプ、組織が属するセクターその他によって、イノベーションそのものも大きく異なっていることが明らかになっている。そこで:
●イノベーションは単発の出来事ではなく、プロセスである。
●プロセスに影響を及ぼす因子を操作することによって、プロセスの結果にも影響を及ぼすことが可能であり、それは、マネージすることができる

イノベーションのマネージメントに関係する分野のうち、一部分のみを発達させるだけでは不十分で、例えば、研究開発能力に優れ、技術革新を生み出す能力に優れているにも関わらず、これらの能力を市場や最終ユーザーの需要に結びつける能力を欠いている企業は多い。

イノベーションのマネージメント能力は学習プロセスが関係している。
いわゆる:
成功するルーティンは時間をかけた経験から学習される。この学習のサイクルを処方するのは易しいことであるにもかかわらず、それをやらない組織は非常に多い。
プロジェクトを振り返る再検討や追跡調査は、しばしば“言い訳” や“問題点の隠蔽工作”の練習になってしまう!

・・・反省のための時間を取らない限り、過ちが繰り返される確率は変わらない。

イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメントpp63-65

photo © Mori

Labels:


October 3, 2006

見せ掛けの万能薬

過去、競争力を獲得するために有効であるとする見せ掛けの万能薬をわれわれはたくさん見てきた。組織は古くからある問題に対する新しい答えを常に探し求めており、その時々で流行したマネジメント思想に対し、各企業が行ってきた投資額は、大変な数字に達している。例えば:
先端的製造技術(ロボット、フレキシブル機械、組み込みコンピューター制御など)
トータル・クオリティ・マネージメント(TQM)
経営情報システム(MIS)
ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(BPR)
QCサークル
ネットワーキングもしくはクラスタリング

元々のアイデアがインチキなのか?
当初の観察が間違っていたのだろうか?

そうではない。行動様式を模倣した組織が単純にやりかたをコピーし調整やカスタム化の必要性を認識しないのが、ほとんどの間違いのもとである。

学習もなく、借りてきたアイデアを組織文化の一部であるルーティンへと昇華させる進歩もなかったということである。

・・・学習しない組織は進歩もない。進歩がない組織は、成長しない。

イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメントpp59-60

Labels:


October 2, 2006

イノベーション・プロセス・モデルの進化

イノベーション・プロセスについて、ロスウェル(Rothwell)が有用な知見を示している。それには5世代が提示されており、第一、二世代は単純なリニア・モデル、第三世代はカップリングモデル、第四世代はパラレル・モデル、そして第五世代がネットワーキング・モデルである。これは、全体的視野に立った理解が重要で、一面に左右されると:
研究開発のみを重視
顧客ニーズのみを重視
劇的な変化のみを重視
キーパーソン一人を重視
NIT(not invented here)問題
をもたらしてしまう。

確認すべき点は:
部分的なモデルではなく、完全なモデルを描く。
汎用的モデルではなく、特定の業務環境も考慮に入れる。
ことである。

実際のところ、これほど複雑で不確実なものをマネージすることは、一見、不可能に見えるやはり、イノベーションを成功させるための簡単なレシピなど存在しない。銀の弾丸は存在しないかもしれない。しかし、たとえイノベーション・プロセスが不確実でランダムなものだとしても、根底にある成功のパターンを見つけることは可能で、特定の企業や人々は、イノベーションの成功確率を高めるためにはどのように反応し、対処すれば良いのかを学習している。

例えば、イノベーションの成功を左右する2つの主要要素:
組織の技術的なリソース(人、設備、知識、資金等)と、
これらをマネージする組織の能力
を活かしているのは、3Mの15%ルール、トヨタのJIT(Just In Time)などであり、その組織特有の進め方運営している。

・・・一般解ではなく、特殊解を求めるのである。

イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメントpp54-64

Labels:


October 1, 2006

環境はイノベーションのマネジメントにどのような影響を与えるか

イノベーションとは何かを新しくしていくことである。さらには、何かと何かを結びつけ、調和させていくプロセスであり、相互作用こそが最も重要な要素である。これは渡辺(技術革新の計量分析―研究開発の生産性・収益性の分析と評価)が示した、内部技術、外部技術の相互作用といってよい。
「結びつける」相互作用が内部同士のものであれ内部、外部に渡るものであれ、その影響を知ることは重要である。とりわけ、環境はどのような影響を与えるのかを下記のとおりに示している。

産業部門の違い:科学への依拠度の違い、設備への依拠度の違い
規模の違い:小企業がさまざまなリソースにアクセスするためには、リンケージを強化する必要がある
ナショナル・イノベーション・システムの違い:制度や政策、支援産業の有無、教育、ほか
ライフ・サイクルの違い:産業全体として流動期にあるか成熟期にあるか
新規性の程度の違い:イノベーションのジレンマの克服

これらが、イノベーション・プロセスが進展する環境に影響を与える。

・・・やはり、イノベーションはプロセスとして理解しなければならない。

イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメントpp48-54

photo © Maco

Labels: