奇跡の食品―カップヌードル

2007年1月21日

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技術者がMBAを取得しようが、製品・サービスの利益創出予測は不可能に近い。他と比べても、ほんの数%の高い確率で精度が高まるに過ぎない。

おそらく、その行為を何度も挑戦できる組織の持続性を維持するタスクがメインである。 社内においても同様である。技術者と企画の予測精度はさほどかわらない。企画どおりにヒットした商品もあれば、技術者が無理に商品化し成功した商品もある。  

「奇跡の食品」といえば「カップヌードル」(日清食品)がイメージされるが、実はこれは同社の「カップライス」である。安藤百福氏(1910-2007)は75年に同商品を開発した。前評判は最高で、政府の後押しもあったが、消費者には受け入れられず、投資金額が回収できなくなった。生産中止である。 

「カップヌードル」の前身「チキンラーメン」は58年に商品化された。前評判は最悪で、食品問屋は、「値段が高すぎる」、同社技術者は量産化へ難色を示していたという。 「カップヌードル」でさえ、前評判は散々であったという。 

 このようは例は枚挙に遑がない。 何が売るれかわからないのであれば、失敗した商品開発の知識、知見を累積するしかない。そのような企業文化を企業のアイデンティティにすることが、成功確率を高めるために、従業員へプレッシャーをかけるより現実的である。  

失敗しないのは少しの改良である。が、少しの改良は、利益をほとんどもたらさない。 大幅な改良は、製品にリスクを背負わすことになる。不具合が出れば、出来損ないの商品企画は、技術者に責任をなすりつけるであろう。逆に、売れなければ、傲慢な技術者は企画、販売部門へクレームをつけるであろう。 

最悪な組合せは、傲慢な技術者、出来損ないの企画のどちらかに絶大な決定権が加わることである。 経営者は気づくべきである。現在、最も優先されることは、技術力、企画力を向上させることではない。企業精神を高めることである。あなたが(経営者が)、○○を商品化せよと言えない立場なら・・・  

・・・経済的競争から脱却出来ない企業は、必ず衰退する。 

 最後になりましたが、安藤百福氏の御冥福をお祈りいたします。 

<参考>日本経済新聞出版 『魔法のラーメン発明物語―私の履歴書』, 2002. 

photo(c)Maco

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