乾電池に関するニュース

2008年2月3日

気になるニュース 電池の話

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先週、乾電池の生産体制に関するニュースが相次ぎ報道された。

「松下電器産業が、国内外の乾電池の生産工場を現在の15カ所から約半分に集約する」(2008/01/27, 産経新聞)
「FDKは東芝グループのアルカリ乾電池全製品の受託生産を始める」(2008/01/29, 日経産業新聞)

電池を生産しているFDKエナジーの株主は、FDKを含め、すでにソニー、三菱電機も株主であり、ソニーや三菱電機は既にFDKに全量を委託していることから、日本で乾電池を生産する企業は、松下電池工業、FDKエナジー、日立マクセルとなる。

今年に入り、松下電池工業からは新乾電池「EVOLTA(エボルタ)」、日立マクセルからはダイナミック ボルテージが新製品として発表されているが、コモディティ化した商品の差別化が困難であることは、松下電池工業が、つい数年前に「オキシライド乾電池」を発売したことを思い出せば伺えるビジネス環境である。

今回の流れは、「どこの企業が生産しても構わないので、ラインナップは揃えましょう」との意図であり、それは、(日本においてはという観点から)ひとつの製品の時代が終わったことを意味している。

事実、乾電池は松下電池工業、FDKエナジーの2強体制になるが、トップ企業である松下が意図するところは「今後はより安価に製品を供給できる生産体制に移行(2008/01/27, 産経新聞)」することなので、製品のライフサイクルから考えると、価格競争の段階になってしまっている。

この潮流は事実上、乾電池で世界一のマーケットシェアを誇る「デュラセル」(P&Gの傘下)でもそうであり、デュラセルはP&Gが全体の増収率の目標としている4-6%を下回るとの懸念から売却の対象になっているのではないか?(2008/01/17, ダウ・ジョーンズ米国企業ニュース:日経テレコンより)と報道されている。

従って、日本、米国での乾電池事業に残されたイノベーションは、生産プロセスで如何に効率を高めるかに収斂していく。

日本の場合、P&Gまでとはいかないが、利益が出ずとも、赤字でなければ、雇用と組合の関係から事業は存続させる方向に動きやすいが、以下のことは各社に余計なコストがかかるため上記の状況と近年の原材料高騰の背景とも考え合わせると、経営者にとっては頭が痛いことである。

<松下電池工業にとっては>
●FDKエナジー、日立マクセルが新乾電池「EVOLTA(エボルタ)」の記録を破る(エボルタは世界No1長持ちとリリースしているので)電池を発売すると、開発資源を追加しなければならない。
●財務基盤の安定している日立マクセルがデュラセルと資本提携した場合、”世界No1長持ち”の謳い文句は”世界No1シェア”の前に陳腐化してしまう。

<FDKエナジーにとっては>
●多くの企業のOEMを担うだけに、今後、原材料が高騰しても撤退の理由になりづらい。
●中国などの企業が成長してきた場合、OEMの使命が終わってしまう。

<日立マクセルにとっては>
●技術色の濃いイメージである当該企業は、新乾電池「EVOLTA(エボルタ)」の強みを前面に押し出されると、開発資源が増加してしまう。

・・・いずれにせよレッドオーシャンであることには違いない。

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