適応の限界-ビジネス環境は急速に変化しているか?

2008年6月12日

品質はこうして落ちていく

t f B! P L
ビジネス環境は急速に変化している、と認識されている。確かに、企業の研究開発部門では、それに対応するマネジメントの確立が急務であるが…。

しかしながら、ふと担当する事業を見直して欲しい。
変わらぬ、競合企業、サプライヤー、顧客…その事業環境の変化は緩慢ではないか?
緩慢な変化に対し、従来の対応をしてはいないだろうか?

組織の適応理論は、企業とビジネス環境の変化のスピードが一致しなければ、歪んでしまう。一致することなどないので、その歪を修正することが業務なのだが、この条件が満たされなければ、適応は組織を破壊してしまう。

ビジネス環境の変化が緩慢であるとき、実は、理に適った行動をとっている。そして、長い間、そのやり方は近視眼的にはうまくいく…。

*  *  *  *
統合型鉄鋼企業は低品質低コストのミニミルに補強鋼の市場を明け渡すことで、利鞘の厚い製品にシフトした。むしろ、ローエンド市場を放棄する理由が見つかったことを歓迎した。その後、ミニミルはジワジワと上位市場へ移行してきたが、その間も統合型鉄鋼業は独占している鉄鋼の高品質化で対応できたため、うまくいっていた。ミニミルの上位市場への移行は実に緩慢な変化であったため、やがて統合型企業を駆逐するまでには15年以上の歳月を要したが、統合型企業が抜本的な変革をの必要性が明らかになったときは、もはや手遅れであった…。
*  *  *  *

顧客に当該企業とは異なるアプローチで接近し、急速な変化をもたらす可能性の高い企業は現われていないだろうか?
利鞘が低いからと「合理的」に放棄した市場は、どのような企業が満たしているのか?また、その企業が上位市場へ移行している事に対し、同様の競争軸で対応しようとしていないか?


そう、抜本的な改革に気づいたときには、もう手遅れなのである。組織を破壊する帰結を生むのであれば、当該組織を適用させないほうがマシなのかもしれない。恐らくは、当該企業が適応できる文化、技術ではない。

適応には限界がある。予測不能な将来には、新しい能力の獲得が必要である。それが何か明確でないことは、競合企業をはじめ、すべての企業において平等である。


・・・最も目に付くからといって、それが最も注目を向けるべき対象とは限らない(マイケル・E・レイナー)

*本記事は以下の書籍の第四章「適応の限界」を参考にしています。
マイケル・E・レイナー, 『戦略のパラドックス』, 翔泳社, 2008.

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