社会人MBA-技術者編

August 29, 2008

原丈人 『21世紀の国富論』

今回の書籍は、これまで数回紹介してきた書籍と比較して、読みやすく、2、3時間もかからないので、涼しくなってきた夜の読書にお薦めです。

「技術を使って世界を変える」こと(本書「おわりに」より)。

新たな産業の創出により経済的豊かさを実現する本質的なことに対して、核心にこのビジョンを置いている。ややテクノロジープッシュ的な面はフリードマンの『フラット化する世界』に似ている部分もある。

著者の米国での経験から帰結していることは、米国資本主義はすでに、行き過ぎに達している、ということである。それを、ベンチャー・キャピタリストらしく、企業統治、株主との関係、ROE*の功罪、はたまたビジネススクールの功罪などに言及し、日本が今後、熟しきったIT産業の後に、基幹産業を育成できる可能性と方策を述べたものである。

*   *   *   *
*ROE(Rate of Return On Equity):株主資本利益率(自己資本純利益率)=当期純利益÷期首・期末平均の自己資本 で算出され、最終的に株主に帰属する当期の利益額をあらわしている(『財務会計・入門 第5版―企業活動を描き出す会計情報とその活用法 (有斐閣アルマ)』より)。
*   *   *   *

ライブドア事件や村上ファンドが頻繁に報道されたときに、多くの人が感じた利益創出のためのあの違和感・・・(儲けりゃいいってもんじゃねいだろう)・・・を詳しく言うと本書になる(ただ、あの時の感情的な個人へのバッシングについては私は否定的です。会計基準への建設的な議論が必要だったかもしれません)。

ビジネススクールで学んだMBA取得者の多くは、株価という名の「企業価値」を最大化することばかり考えています。そのために経費を削ろうとして、メーカーであれば研究開発費を削り、中央研究所も処分すべきだと主張します(pp49-50)。

これは簡単な話、ROEの分母を削ることで、指標を改善することがネライで「従業員を解雇したり工場を売却したりして外注し、資産を圧縮する(p50)」ことに企業価値向上を見出しているためである。”当期”の間に出来ることはこれぐらいでしかない。だから、中長期のR&Dが嫌われるのである。内部留保がいいように使われるのも、このためである。

従って:
「「企業は株主のもの」という考え方を基盤に経営を行っている以上、理想的なコーポレート・ガバナンスなどあるはずがない(p136)」
のである。

とは言っても、本書で述べられているテクノロジー*が日本で基幹産業的に発展する利があるとしても、日本の経営風土に対して:
「日本の社長は自分で決定しない。社長は担当役員に任せ、役員は担当部長に任せ、部長は平社員に任せる。それでまた上に戻ってくる(p226)」

のごとく、ある技術ひとつについても見る目が無いことがある。

*   *   *   *
*文中のテクノロジー:PUC(Wikipedia)のこと(専門家ではないので詳細については明るくありません)。
*   *   *   *

さらには、蔓延する「ブランド志向」についても:
(例えば海外のいいベンチャーが開発した技術に対して)
「(それは)どこの会社と提携してますか(p229)」

と他の企業や有名企業が採用していないと採用しない横並び意識、もたれあいが技術を育成する点においては悪影響であると指摘し、いわゆる企業ユーザーに関して”アーリー・アダプター”が少ないとしている。

企業は社会の公器とも言われるが、利益を出さなければ淘汰されるのも事実である。あまりに短期的な利益要求が経営をマネーゲームにしているが、株主を悪者にできないのは、大きな支配者ではなく、多くの人の年金基金であることが多いためである。

R&Dと生産現場のすり合わせ、将来を有望視する赤字事業の継続・・・日本を考えた時、この米国化は日本の製造業の強みを奪ってしまう。

・・・MBAは会社を滅ぼしてはならない。

*ちなみに、米国ではR&Dはベンチャーが担っており、比較的資金は豊富で、大企業は買収するのが主流です。

<参考書籍>
*こちらは糸井重里と原丈人の対談(敬称略)。
http://www.1101.com/hara/

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August 27, 2008

「さらば工学部」日経ビジネス 2008.8.18号pp24-42より

テクノロジー・・・日本がグローバルに展開できる経済活動のキーワードである。記事から読み取れることは、今後日本は二重の痛手を負うことである。

官製不況(Wikipedia)とも言われている”失われた”状態に日本が陥るも、企業は、この間の円高、アジア通貨危機、最安値の株価などの逆境を生き抜き現在に至っている。

経済は、人口動態に左右されるので、今後の日本において、テクノロジーの担い手は減少していく。これは、ある程度先が読めるものである(が痛手には違いない)。

これに加え、

「「ゆとり教育」の影響か、日本を代表する大学の例年レベルで行われる定期試験において、驚くほどの不合格率が記録された、そればかりではなく、入試問題自体すら大幅にやさしくしている(pp26-27趣意)。」

当然、大学での研究活動に影響が出てしまう。企業においても、研究、開発分野でリードしなければならない分野において、芳しくない状況であるといえる。

二重の痛手である。

確かに、工学部への不人気は、失われた期間における企業の経営が、節操のない”リストラ”により、暗い影を落とした影響もある。また、金融業界の人気の高まりから、企業のセレクションで製造業が選択されない面もある。

しかしながら、その当時の、いわゆる大人の施策群は、子供には関係ない。


私は学生の頃、理学系の大学院で研究した。その後、メーカーに入社し、再び経営系の大学院へ入学し学んだ。自身が行ったからというわけではないが、将来的にMBAやそれに近いキャリアを積みたいのであれば、まず、理学、工学、医学分野へ入学することが望ましいと思っている。

潰しが利くのである。

欧米のMBAでは(欧米出身のMBAコースの学生は)、理学、工学、医学出身者が多くを占めている(リベラル・アーツはおいといて)。

経営や経済分野が、それに比べ簡単である、という訳ではなく、理学、工学分野で言えば(医学は記載するほど学習過程に詳しくありません・・・)、その分野の習得には、学部時代から、実験を通じた研究作業を伴うことがほとんどで、経営、経済分野に比べて、机上で出来ることが少ないからである。

だから、人文系出身者が、しばらくの業務期間を経て、理工学系大学院へ進学する、という(上の記述と)逆の構図は成り立ちにくい。

どのみち、ビジネスでは問題解決にサイエンス的な思考が必要になるのであるし、ある程度年齢を重ねてから数字に強くなること、センスが磨かれることは非常に考えにくいので、若いときに訓練しておくのも、ありかなとは思う。いくら、ソフトウェアやPCが発達し、計算処理能力が飛躍的に上昇したといえ、数学が出来なければ、使いこなすことは出来ない。

訓練していなければ、驚くほど、数字を多面的に見れない。技術者の示す数字、いや、マーケッターの示すことさえ、一面的にしか捕らえることができない。例えば・・・
なんでもかんでも「前年比○○%」
なんでもかんでも「平均値」
など有意性の議論すらない。。。

・・・エンジニアも含め、今後の労働者の頭脳は総合大学化していく。

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August 26, 2008

『新たなる資本主義の正体』

最近の企業経営、外部環境の変化・・・

(何か変わってきたな、いや前とは違うかもしれない・・・)

そのうすうす感じているあなたの予感は的中している。
最近の潮流は変わり始めている。それに伴い、企業経営も影響を受けている。


そこに着目し、新たな潮流に関して述べたものが本書である(下の参考書籍)。

株式・・・「いやぁ、投資は経験がないなぁ」と思われるかも知れないし、実際に、特定企業の株式を所有していないかもしれない。

しかしながら、年金・・・日本に限らず、世界中の年金やその他の資金は、基金、ファンドを通じて投資に運用され、利益を創出することが潮流となっている。そのように薄く広く株式が広まれば、前時代的な支配者的株主とともに、市民株主が登場する。

希薄になった株主には企業は説明責任を意図的に避ける傾向がある。

それは以下のように波及しているかもしれない。

波乱のない安定経営を損なうことを恐れるあまり、ライバル企業の台頭をよそに起業家的発想を抑制しかねない。会社は避けられたはずの陳腐化への道に追い込み、その過程で雇用も企業価値も評判もズタズタになるかもしれない。要するに、責任者不在の状態に陥る恐れがある。資本主義ではこうなったら一巻の終わりだ。」(p30-31)
聞こえのいい『安定経営』は企業価値を著しく下げることになるのである。



さて、企業の動きを知るには、お金の動きを知ることが最善の測定法であるが、経営環境が変化している現在において、伝統的な会計基準で、次のことを予測できるだろうか?(以下のセンテンスはpp222-227)


  • そのビジネスモデル自体の基本的持続性
  • 特許、商標、労働者のナレッジなどの無形資産価値
確かに、財務諸表は有効ではあるが、資本家も経営者も知りたいことは、過去の評価ではなく、将来起きそうなことを予測し、難しい課題にどのくらい対処できるかを予測することである。

冒頭に述べた希薄な株主(=市民株主)が増加すれば、企業に求めることは:
「持続可能な長期的成長を重視するようになる(p229)」
になっていく。

このようなときに、着目すべき価値とは:
「(価値創出活動の概念に含まれるものは)イノベーション、ブランド価値(最近の宣伝・販売促進・マーケティング費用)、顧客価値(新規顧客向け売上高など)、人的資本価値、サプライチェーン、環境的、社会的価値(p253)」
であり、「会社は創出する利益でなく、価値の最大化を図るべし(pp87-88趣意)」なのである。

結局、過去の方法を踏襲していくことは、今後:
「生産の目的は利益の最大化である前提から最も適正な利益の上げ方といった重要な問いは無視(p59)」
され、(利益などの)結果より、そのプロセスを如何に株主に、顧客に、従業員に伝えるかなのである。

・・・市民経済の台頭により、旧来の秩序を覆す、パラダイムシフトが起こりつつある。本書はその全体像にアプローチするのもである(by amazon 本書の内容紹介より趣意)。

<参考書籍>
*文中のページ表記は以下の書籍によるものです。

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August 19, 2008

標準化とマニュアル化

標準化とマニュアル化・・・間違えると大変なことになる。(前置きが少し長いので、本題は次の写真あたりから始まっていますので、スクロールしてください)

1980年代、日本の成長は、その円高によるものと考えられることが多かった(GDPなどがドルベースで計算されるため)。しかしながら、単なる為替の影響ではないことから、主だった日本企業を中心に研究が始まった。

その代表的企業はトヨタであり、”カイゼン”は共通語となっている。

多くの学識者やそれに付随する企業経営者は、その工場を見て学習した。それらの知見がさらに普及し、カイゼンは広まっていったが、同じものを見て同じ結論があることはない、とは言うまでもない。これは、それぞれの立場や背景が異なるので避けられないことである。

合理的な者は、作業環境に無駄がなく、作業自体も合理的に配分されていることから、作業の合理化に眼がいくであろうし、伝統的な日本の製造業のトップは学習することすらなかったのかもしれない。なかには、『これはいい商売になる』と考えた者もいたかもしれない。

巷間、「トヨタはあれだけ管理方法を公開しているのに、日本の企業はどうしてあの企業ほど利益を創出できないのか」と言われることがある。一見、説得力のある意見だが、情報が公開されているのであれば、文中の「日本」はどこの国や地域であってもよいはずである。

逆に「日本からこれほど情報を公開しているのに、どうしてその企業や国、地域で、品質のレベルが上がらないのであろう?」「歴史の長い自動車産業において、近くにトヨタがありながら、日産、マツダはどうして外資の傘下になったのであろう?」

それは経営の問題かもしれないが、企業において、これまでと異なる生産方式を導入することも経営の中の意思決定である。

トヨタは「自動車」を長年生産している。その歴史の中で、オイルショックを機に編み出した生産方式が、現在まで続いている。時代が変われば、評価も変わるもので、今後は、一日に何度も輸送される生産方式の形態は、環境問題から非難される。

街の大手書店には、カイゼンやカンバン方式の書籍が山積みされている。

プラザ合意、バブル崩壊、超円高、株価最安値など、多くの試練を乗り越えて生き延びてきた企業は、おそらくは、見向きもしない。バリューチェーンを丸抱えする企業において、コストの削減は、研究開発、設計の段階で行なわれ、生産現場での削減すべき余剰コストは、ほとんどないからである。


さて、(訳のわからない)前置きが長くなったが、今日の記事にするのは、「標準化とマニュアル化」である。

日本の伝統的製造業では:

例えば、1時間の作業のうち、その作業が50分で終了したとする。多くの生産現場のオペレーターは、残りの10分を、次の準備をしたり、道具(治具)を研磨、切削などメンテナンスをしたり・・・と、
おぉラッキー、10分サボれる
とは考えない。

50分で終了することが常態化すれば、そのプロセスを作業手順に盛り込んで、50分の作業に修正する。

若手は、その作業を一人で出来なくとも、1.5人で行なうなど、作業を覚えていく。さらに、彼らが彼らなりの工夫をし50分で終わらせることができるのであれば、作業手順は変更される。

このように、内部の作業者がカイゼンを続けていくなかで作業手順を定めていくことが「標準化」であり、外国語でこれを表現するには難しい面がある。

やはり、これらをマニュアル化ととらえてしまうことは起こり、手法が優れていることに焦点があたるが、これは作業員が優れているのである。

長い眼で見れば、企業において、長年カイゼンを継続してくれる従業員は大きな財産である。

「余所モンが来ても、誰でもわかるように」するのはマニュアル化であり、似ていても、少なくとも研究対象になったトヨタの例とは非なるものである。こんな、ベテランや職人を冒涜するする作業はない。

最近は、このカイゼンを紹介するのに、漫画というわかりやすい表現で書籍化もされているが(下の参考文献)、標準化とマニュアル化については、とてもわかりやすく、マニュアル化を勧める従業員を叱咤している。

結局は、常にカイゼンしていく、というモチベーションを養成していくのであれば、トヨタ式に限ることではない。

標準化の悲劇は、生産現場に置いては、現代では、すでに開発、設計段階でコストが削減されているので、大きな(カイゼンに対するモチベーションを維持できるほどの)カイゼン結果が得られないことである。

マニュアル化の悲劇は、従業員から創造性を奪う(マニュアルにないことはしない)、に加えて、同僚を失ってしまう*ことである。
(*正社員でなくても良い作業と判断された場合)

・・・ただ、そういうカイゼンのモチベーションを維持し続ける、社員を熱狂させる、というのは難題です。

<参考文献>


August 16, 2008

対応すべきはEUである。協調すべきは中国、韓国、台湾である。

20XX年のGDPランキングが発表される。

  • 1位:EU
  • 2位:中国
  • 3位:米国
  • 4位:日本 or インド

どの地域にも抱えるリスクはあるが、それを差し引いて考えると、将来的な展望は、こうなるであろう。

サブプライムをトリガーとした金融収縮は根深く、日本のバブル崩壊と重ね合わせると、長銀破綻の手前といったところではないだろうか。今後、中堅企業にジワジワと影響が出始め、米国は深刻な経済状況となる。

米国へ最も輸出する中国、米国の産業を裏(米国からみて地球の裏側という意味で)から支えるインドは、しばらく、連動し、その余波は日本へもやってくる。幸い、日本はサブプライムの影響は(世界に比べて)小さく、原動力である、素材や機械分野は寡占状態であるため、ショックは少ない。

ここへきて、戦後、米国一辺倒であった日本は、その視野を世界へ向けなければならない。「規律ある通貨」としてのユーロ、EUは強大である。

すでに、多くの企業が、中東欧へ拠点を設置しているが、これからは、その次のステップである。

それは、これまで築いてきた国別の組織から、欧州統括拠点を設置し、製造、販売機能の分離や管理機能を集約していかなければならない。EUはドイツでもフランスでもなくEUなのである。そのような意識のジェネレーションが十分すぎる人口で台頭してきている。おそらくは、マーケティング戦略の変更も必要である。

近い将来、日本はGDPで第4位か5位の国、しかも労働人口は減少、など影響力は微力である。多くの政治機会で、そのほとんどが市場にポジティブに捉えられることのない日本では(官製不況などという言葉もあるように)、企業の役割は大きい。

そういった意味では、EU、米国、中国、インドと大きな枠組みに収斂しつつある世界で、日本の企業は独特の閉鎖性を解消することが課題である。大手企業のグローバリズムが進むとは言え、企業内が多国籍の人で溢れているという企業は少ない。

米国が恐れること:それは、日本や韓国がiPodのような製品を創造するコンセプチュアルな能力の獲得であり、EUが恐れること:それは、100年の戦争、東西のイディオロギーを越えた経済圏を形成してきた経験から、東アジアの意図的な経済圏の形成、である。

確かに、現在の日本企業は、経営の合理性からアジア各国に生産拠点を求めるなどはしているが、今後5年、10年を考えれば、中国、台湾、韓国との協調は欠かせない。

残念ながら、日本は決定的な弱点を持っている。それは:

Lack of Management capability

である。未だに、今後のビジョンを描けず、迷走する企業は多い。ならば、他国にマネジメントしてもらえばいい。何せ、現在まで生き残った企業は、プラザ合意、バブル崩壊、超円高、アジア通貨危機、株価8,000円割れを経験しても生き残った企業群である。本社の機能がしっかりしていれば問題ない。

made in Asia が made in Japanに裏打ちされればよいのである。

・・・今、世界は地殻変動のように静かではあるが、大きく変わろうとしている。

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August 11, 2008

私の学習遍歴③

多くのことを学んだように思うが、よくよく考えると、対峙した課題に対して:

  • 問題を定義する
  • 数値化し測定する
  • 多面的に分析する
  • 改善する
  • そして維持管理する

  • 眼に見えない課題はCOPQの考え方で潜在因子をあぶりだしていく・・・。

    シックスシグマで習ったことじゃないか。。。

    シックスシグマがどうこうではなくて、そもそもの基本スタイルをシックスシグマが採用していただけで、そこに、種々の手法を盛り込んだものなのである。

    あぁ・・・要は論理力か。。。

    正直な感想であった。開発的な事柄であれば、少しの技法を学んでも、十分に活用できるのは、そのバックグラウンドがしっかりしているからである。

    じゃ、そのバックグラウンドを身につけるしかない。

    前日の記事での講座が終了しかけている頃、もうこれぐらいでいいのでは?と考えていたが、知的な興味は止められず、このころからMBAを具体的に考え、調べ始めていた。

    その頃、私の頭で、「イノベーション」という用語が気になり出しており、一冊の書籍を読み込んでいた。

    イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)』(クリステンセン)

    である。この書籍は、内容が素晴らしいのではなく、アプローチが素晴らしいものである。やはり、学術での研究が必要なようである。

    MBAとはいっても、所詮は単なる大学院である。巷間、種々に言われるが、その基本スタイルは理系のそれと変わりはない。このことに関して、よく言うことがあるが:

    理学(または工学)修士だからといって、研究開発分野のマネージャーとして採用されることがないように、MBAだからといって、マネージャーとして通用することはない。顧客を知り、現場、製品、従業員を知る。これが基本姿勢である限り、マネージャーはMBAである必要は全くない。そう、単なる学歴なのである。

    再び、大学院に進学し、経営、組織、戦略、統計、マーケティング、イノベーション・・・多くのことを学んだし、多くの方に種々のことを教授していただいた。

    やはり、そのような環境へ身を置くことが私にとっては、一番効果の高い方法であった。大きな書店に行けば知識は身につけられるように思うかも知れないが、理系の際もそうであったが、大きな書店と言えども、専門書はわずかにしか置いていない(売れる本を置くので仕方ないですが)。

    これは、MBAでも同様である(最近はamazonにより専門書も入手しやすくなった)。

    それ以前に重要なことは、やはり、議論である。研究開発分野では必ず行なうことであるが、MBAでも変わらない。私が、近年、企業の教育費や教育機会を多忙や業績を理由に逓減していくことに危機感を抱くのは、このためで、『そのチームの構成メンバー以上のソリューションは生まれない』からである。

    ・・・教育に投資することほど、裏切らない投資はない。


    私の学習遍歴-了

    ~以前の記事~
    私の学習遍歴②
    私の学習遍歴①


    <MBAでの知識は以下のサイトの書籍が参考になります>


    <参考書籍>
    *この3冊は、私が所属していたゼミの必読書でした。

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    August 10, 2008

    私の学習遍歴②

    そんなこんなで時が過ぎ:

  • TRIZ を習得したところで、業績にインパクトを与えられるわけではない。
  • ドラッカーを読んだと言っても、彼を理解するほど、経営に達者ではなかった(後に役立ちますが・・・)。


  • マーケット部門と技術部門はお互いに宇宙人だと思い込んでいる面があり、私の中の的はマーケット部門へ向けられていた。

    が、かといって、具体的な戦略は見出せないでいた。第一に、技術面ほど、マーケット部門のことを知らない。どのように戦略が練られ、どのように施策が実行されるのか、意思決定はどのように行なわれるのか・・・。

    気付けば:
    ○原価計算以外は、財務は疎い
    ○財務諸表は読めない
    ○企業の運営もよくわかっていない
    ○業界の分析が出来ていない
    ○戦略とは?に答えられない

    単なる技術者の遠吠えであった・・・。
    必然的に、私の目は「経営」へ向けられていった。

    その時に、参考になったのは、大前研一著『企業参謀―戦略的思考とはなにか』であった(今は文庫本、続編もあり、安く購入することが出来ます、文庫本は下のamazonへのリンクで”新品”の価格が安いほうです)。
    さすがに、大前氏がコンサル時代の経験から書いたものであるため、ものの考え方がよくわかる書籍である。

    そこを起点に、大前研一、齋藤顯一著『実戦!問題解決法』を読み、より深く学習するため、以下に記載する教育コース(当時は名前が違った)を受講し始めた。
    (この書籍は文庫化されており、安く購入できます。下のamazonへのリンクの”新品”の価格が安いほうがそれです。この書籍は、ビジネス・ブレイクスルー大学院大学が提供する問題解決必須スキルコースのフロントエンド商品ですが、ザックリでいいのであればお薦めです。)

    受講しようとしたコースは大変に高額であったため迷ったが、当時は、社会人教育に関する給付金の返還率も高く、結局は、月換算で2万円弱程度に落ち着いたと思う(当時は教育訓練給付金の対象でした。ちなみにこのコースは1年です)。

    この中で:
  • 取り巻く環境の評価
  • 効果的な情報収集
  • フレームワーク
  • 業界・企業分析
  • ロジカル・シンキング
  • プレゼンテーション
  • など、ビジネスに関する問題解決の基礎を学ぶことが出来た。

    さらに、上記のことを補強するため:
    考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則』(バーバラミント)
    ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)』(照屋華子、岡田恵子)

    問題発見プロフェッショナル―「構想力と分析力」
    問題解決プロフェッショナル「思考と技術」』(齋藤 嘉則)

    システム・シンキングトレーニングブック―持続的成長を可能にする組織変革のための8つの問題解決思考法
    システム・シンキング―問題解決と意思決定を図解で行う論理的思考技術』(バージニア アンダーソン他)
    問題解決と意思決定―「ケプナー・トリゴーの思考技術」』(R・エバンス他)

    マッキンゼー流図解の技術』(ジーン ゼラズニー)
    経営参謀が明かす論理思考と発想の技術 (知力アップ講座)』(後正武)
    意思決定のための「分析の技術」―最大の経営成果をあげる問題発見・解決の思考法 (戦略ブレーンBOOKS)』(後正武)

    などの書籍を参考に学習した。
    *他にもあったが、残念ながら、当時の書籍は売ったり、譲ったりしてしまっているので、手元にありません・・・本当に懐かしい書籍です。
    *「問題解決」に関連する書籍の紹介はこちらに詳しい(能力開発Planningより)です。

    今振り返ると、上記の学習内容とエンジニア・・・次に興味を持つ内容を用語で言えば「イノベーション」であることは、想像に難くない。

    (つづく)

    私の学習遍歴③
    私の学習遍歴①


    <取り上げた書籍>





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    August 9, 2008

    私の学習遍歴①

    「なんか、よくわからない」
    「とりあえず、写真を見てます」

    など、このブログに関するご意見を頂いている。

    『これは、作者の備忘録ですので・・・』

    ということで勘弁していただき、今回から少し、私のこれまでの学習遍歴(書籍や情報源)を述べ、参考にしていただけるのであれば・・・と振り返ってみたいと思う。
    まず今回はこれまでの流れ、ということで・・・多くの方が夏休みの期間にアップしますのでダラダラ読んでください。
    *シリーズは3回で、24時間以内に次の記事がアップされます。

    *  *  *  *

    もう、大学院を卒業して10年が経過している。
    田舎の大学でノビノビし卒業後、電機メーカーへ入社した。大学院での研究内容は、主に半導体の結晶構造解析であった。

    さて、入社後、担当製品の開発分野を把握することに多くを費やした。学術文献、特許、製法、業務の流れなどである。そうしているうちに、製造ラインの新設に加わり、生産機器メーカーに入り浸りになることもしばしばであった。
    いわば、普通であったと思う。

    転機は、入社して2年半が過ぎた頃のシックスシグマのブラックベルト研修である。(エンジニアと言っても、平社員だった私が、ビジネススクールへの入学を許されたのも、プロジェクトリーダーとしての多くの経験が評価されたと思っている。*当時は、結構入学倍率高かったんです。)

    何気に、若手の研修程度に思っていた私は、後で大いに後悔するのであるが、製造業で使用する主な技法、FMEA、FTA、特性要因図、リーン生産、制約理論、QFD、基本統計、タグチメソッドなどは、ほとんどそこで基礎が構築されたといってよい(このセンテンスのリンク先にはそれぞれの参考書籍を掲載しています)。
    *設計技術もDFSS(ミツエ-リンクス)(デザイン・フォー・シックスシグマ)で補完された。

    その後、製品の開発と並行して、ブラックベルトとしてプロジェクトを進めていったが、何せ、プロジェクトの範囲が、バリューチェーンのほとんどであるため、常に勉強であり、営業系のプロジェクトを担当したときなど、他の営業系のブラックベルトがリーダーであるプロジェクトへも参加し学習しなければならないほどであった(その出張を許可してくれた良き上司のおかげでもあるが・・・)。

    その頃には、工場の端から端までの工程の機構や問題点を把握するまでになっていたが、どこかしら、気になる用語があった。

    それは、シックスシグマで使用する「経営品質」という言葉であった。

    私がブラックベルトとしての活動していた期間の累計効果金額(いわゆるCOPQ)は、種々の部門の方々のバックアップにより、年間売上高の10~15%に達していた。また、開発においても、当時同僚であった先輩方の力により、納期割れもなかったが、経営指標は改善されなかったからである。

    そういった状況の中、エンジニアである私は、次の事に興味を持ち始めていた。

  • 新たな手法-発明技法であるTRIZ
  • ずばり!経営とは?

  • TRIZに関しては、企業の研修を利用し、次世代予測技法と矛盾解決について習得した。
    経営については、この段階では、漠然としていたが、当時の専務に紹介していただいたドラッカーの書籍を読むようになっていた(が、どこまで理解できていたのやら・・・)。

    (つづく)

    私の学習遍歴②
    私の学習遍歴③

    <当時読んでいたドラッカーの書籍>

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    August 6, 2008

    相対的研究開発速度論


    (経営者)「わが社の研究開発のスピードでは対応できない」
    (研究開発者)「あなたが、現役のころに比べて何倍のスピードになっていると思っているんだ」


    本当によくある会話である。
    実際に、どちらの言うことも正しい。経営者は肌でそれを感じているし、研究開発者は、そのスピード感を体感している。

    研究開発のスピードが速くなったのは、主に事業化のスピードが速くなったことによる。(主に実験を通じて)仮説検証を何十も何百も繰り返し、要求機能の発現機構を発見していく地道な作業は、今も昔も変わらない。タグチメソッドや実験計画法、またデータマイニングがPCの処理能力により劇的に高速化されようが、所詮、最適化段階での使用なので、高速化への寄与率は低い。

    経営者が対応できないと考えるのは、市場の多様化と複雑化へ対応することに比べてである。

    単純な話、市場の複雑化、多様化へは、一社の研究開発スピードでは対応できなくなくなっているのである。

    ならば、話は早く、研究開発行為を並列化すればよい。外部資源を活用するのである。このような概念はオープンイノベーションとして語られ、P&Gや3MはこれまでのR&DをC&D(Connect & Development) の概念を取り入れ利用している[1][2]。

    が、これはそんな簡単な話ではない。外部資源を利用することは、内部の研究開発者には抵抗がある。実際に、P&Gは慎重に、いや神経質に外部資源を取り入れている(『クラウドソーシング 世界の隠れた才能をあなたのビジネスに活かす方法』pp47-50)。

    私はこのオープン・イノベーションの礼賛には懐疑的である。ほとんどの発明は、これまで発明されてきた概念を使用することが多く、TRIZ などでは、その概念を体系化している。また、実際の現場では、言われなくとも、複数のサプライヤー、大学と共同で研究を行っており、アイデアから商品化まで企業の境界線内で一貫するほうが珍しいからである。

    さて、大よそ、企業は論文より、特許である。すなわち発明である(研究開発という言葉の定義にもよりますが、電機業界のそれをイメージしています)。
    ここでの仮定は、(発明に関して)いわゆる頭脳は離散していてもいいのか(フラット化されるのか)、である。

    *  *  *  *

    経験的には、似たような製品群の事業では、集積していたほうが相互作用が高く、普通は離散させるという低効率なことはしないが、発明行為に関しては、以下の興味深い研究がされている(知的財産研究所,『特許の経営・経済分析』,雄松堂出版, 2007, pp125-135;第5章 頭脳集積の必要性より)。

    研究では、特許のサンプルにバイオ技術分野を用い:
    ①その発明者間の距離
    発明者間距離
    ②特許に引用されている論文(知識創出の源)とその特許の発明者との距離
    論文伝達距離
    という2つの距離を定義する(ここで距離とは物理的距離)。

    それらを計測した。結果:
    発明者間距離:31.7km
    論文伝達距離:4323.5km

    *ともに中央値

    と分析されている。論文=知識想像の源(研究成果が論文という形式知にまとめられている)へのアクセスは、遠くまで行われるのに対し、技術の発明は、近距離に頭脳が集積していることが重要であることを示唆している。

    C&Dが発達すると言えども、知的財産の取り扱いは慎重に行わなくてはならないことから考えると、この結果は興味深い。知的財産は、クローズしなければならないからである。

    そうなれば、オープン化は研究開発行為のスピードが速くなるほど、知的財産化する過程でマネジメントの時間が必要となってくる。

    ・・・研究開発のスピードは種々の顧客と相対的であるため、速めなければならない、ということでもないのである。


    <参考文献と夏休みにお勧めの書籍>

    ○情報通信技術、輸送技術の発展による影響に関して


    ○『We are smarter than me』一読したい書籍!


    ○”頭脳は集積する必要があるのか”についての特許分析からの研究
    知的財産研究所,『特許の経営・経済分析』,雄松堂出版, 2007.

    [1] Huston, L., Sakkab, N., "Connect and Develop", Harvard Business Review, 84, No.3, March 2006.
    [2] Fiocchiaro. R., "Opening an Innovation Company to External Solutions Fueling the New-Product Pipeline through External Innovation", CoDev conference, 2006, Jun30-Feb1.での発表より。

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    August 4, 2008

    本社の機能

    本社の有する機能は:
    意思決定機能
    広域的管理機能*
    *調達・購買・外注、市場調査・営業、研究開発などの諸部門を適切に管理し、運営していく機能

    の二つにまとめられる(名古屋大学 多和田 眞 研究会,「東海産業クラスター分析~地域経済発展のための方策~」ISFJ 政策フォーラム2005発表論文 3rd-4th Dec 2005.p32~第4章 本社機能より。
    資料はこちらです。

    将来有望な事業において、幾つかの主企業が操業している地域であれば、サプライヤーや研究機関などが集積しているため、その事業を有望視するなら、その地を本社に起業することや、本社機能を移転することは望ましいことではある。

    税制の面からは、日本の税率は世界のなかでも高く、約40.7%の実効税率(国税の法人税+地方税の法人事業税+法人住民税)に通常は、所得税を負担し、約50%にも及ぶ。将来的にはEUやロシア、米国での法人税率が20%代になることを考えれば、日本を除いて世界は”タックスへブン”だらけである。


    2008.7.17の日本経済新聞によれば、製造業の税負担率は2008年3月期において、税負担率は38.9%となり、過去最低であることが報じられた。
    主な企業の負担率は:
    15.3% HOYA
    26.3% 松下電器産業
    27.5% デンソー
    33.2% 旭化成
    34.4% 住友化学
    35.3% マツダ
    37.4% トヨタ自動車
    などである。特に、松下電器産業は、今決算で大きく、負担率を低下させている。

    いわゆるグローバル企業は、海外での利益を日本へ還流させなければ、日本の高い税率では課せられない(利益を現地においたまま、現地での税率を適用する)。海外での利益は、再び、海外で再投資するのである。

    従って、日本の場合、国内で本社を移動するのは、東京へ本社を移動し、政治や経済の動向をいち早くキャッチし、企業を機能させるため、情報公開に関する機能(投資家への説明など)が東京に集中しているため、または、多くの企業が東京にあるため、便利なことが多いためである(国内、海外への移動(飛行機)も便利ですし)。

    逆に、あまりにも、東京での種々の干渉が強くなると、もともとあった地域にもどるか、東京に本社を置かない。

    ともあれ、グローバルに展開している企業であれば、税負担率を低くすることが出来るので(税の空洞化は問題です!)、企業の経営効率を高める為、本社の機能が最大化する地域にあるのであれば、問題ないのである。

    ただ、”本社”というのは、従業員にとって特別な響きがあり、特定セグメントではなく、全従業員に興味を持たせるため、その機能の発揮に関する決定や変更、または移動などに際して、ネガティブなイメージを伴なわせることだけは、組織に敗戦ムードが漂うのでしないほうがいい。

    *奮闘する橋本知事で財政危機の大阪が注目されましたが、地域経済への影響を把握する良き測定系であるためか、「大阪における企業の本社機能」も研究されています。
    http://www.pref.osaka.jp/aid/chosa/03-88/03-88.html

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