社会人MBA-技術者編

October 31, 2008

インターネットとリッチネス&リーチ

アントレプレナーシップというと、よく「起業家精神」と言われる。一見、MOT(技術経営)と独立していそうなこの概念だが、実は親和性が高い。

私が通っていたビジネススクールでも、専門クラスではアントレプレナーシップを選考している学生とよく顔を合わせていた。実際、テクノロジー・マネジメントを専攻した私だが、アントレプレナーシップ専攻でも卒業要件を満たすことが出来る程である(論文査定以外での話です)。

少し良くする程度の製品やサービスでは、少しの利益を創出するにとどまる成熟経済においては、ハイコンセプトが求められる(ことが多い)。ご存知のように、ハイコンセプトな製品やサービス(もしくは事業戦略の構図の変更など)は、時に大幅な利益をもたらすが、成功確率は格段に低くなり、簡単なものではない。この点は、新製品を開発しようが、起業(企業内、外に関わらず)しようが同じことである。

そういった背景から、自然にイノベーションのマネジメントが注目され、研究が盛んになっている。また、アントレプレナーシップでは、起業家の生立ちや半生に迫り、人間や歴史を研究することもある。

そう・・・簡単なことではないのである。

インターネットは、これらの基盤を変化しつつある。

例えば、インターネットによる集団知とは:

のように、集団により紡ぎだされることもある。

さらに、顧客へのリーチを確実にする(長く、深く)ことはご存知の通りで、当初は雨後の筍のように出現した”情報商材系”商品やブログ、ホームページなどによる情報の発信などである。これにより、その道のプロとの距離が短くなっているが挙げられる。

例えば、TOEICでの有名講師であるヒロ前田はそのブログやメルマガで多くの人に情報を提供している。
*下の書籍で有名です(写真はローバート・ヒルキです)。
さらに、前出のブログで金井の「TOEIC対策商材(プロジェクト)」が紹介されている。
また、情報商材系のコンサルティングにおいても和佐は、「60日で情報起業」で、その概要をこういった商材にありがちな「お手軽、簡単、すぐ儲かる」の安易なビジネスでないことを披露し始めている。

さらには・・・大学や企業の講座など、その道のプロが(いや素人でさえ)、顧客に、より長く、深くリーチする例は挙げればキリがない。
*いずれも敬称略(利用や購入はご自身の判断になります)。

特に上記のような講義室タイプ(生徒と教師)では、インターネットは強力なインフラで、リッチネス&リーチ(クリックするとこの記事の下に関連記事が現れます、多分・・・)を達成し得るものと言える。

(そんなこと知ってるよぉ・・・)

・・・なんだか、難しい時代になってきました。

Labels: ,


October 29, 2008

長い冬が始まってしまうのか。。。

最近のニュースは経済問題が多い(このブログもそうですが・・・)。以前にも述べたが、現在の金融危機と類似する状態は日本も経験している。問題は、現在がどのフェーズかである。

いささか、今回の問題は米国が一国内で解決しようとしている嫌いがあるが、流動性ショックの際に、不良債権を買い取ることを始めてしまったら(これは流動性ショック後のフェーズでの対策)・・・

銀行が機能しない・・・(かもしれない)

これは、結構深刻なことで、日本がバブル崩壊後味わった10年が1,2年に圧縮されることが起こってしまう。最悪、資本不足を輪転機で解決されたら、日本が持つ多くの米国債は暴落、もはや借財を積めない日本は、現在、新興国で発生しているような状態になってしまう(未曾有の株安、自国通貨安)。

不必要に日本悲観論を振りかざすことはないが、日本楽観論と同様に、そうなる確率がある、というだけのことである。

そういうことなのか、どうなのかはわからないが、株価の底は見えてこない。下のグラフに日本のバブル崩壊後、ITバブル後と現在の株価推移を指数表示で示している。
*以下でフェーズの進行と株価推移について若干説明しています。http://www.ilibrary.jp/charts/charts0810.html

バブル崩壊後、ITバブル崩壊後と現在の株価推移(指数表示、週足)

10年が1,2年で短縮されて起こってしまうなら(GMやフォード、シティの倒産が早々に次々起こるなど)、まだ下落する余地はあるが、機能する対策が実施されるなら、多少の上下落はあるが、しばらく今のレンジを維持するかもしれない。

このような時、留保のある企業はシブトイ。逆にいうと、今必要なのはキャッシュである。

・・・日本にとっても長い冬が来たようです。。。

photo by Maco

Labels:


October 24, 2008

投資、株価、推移・・・徒然・・・とっても長くなってしまいました。。。

ネットでの証券口座解開設や取引が急増しているらしい(例えば日本経済新聞 夕刊2面, 2008.10.18)。
記事によると、「未経験者が多い(約6割)」。確かに、今は最安値をうかがう、また更新するまで下落しているので、「買い時と判断」しているのかもしれない。

株価の変動、為替の変動がこの1,2週間はめったに見れないくらい大きいので、いざ、口座を開設し実際に取引を始めた方には、興味を引くことかもしれない。

また、小遣い程度の金額でも十分はじめられるサービス(商品)もあるため、当面使用用途のない銀行に眠る資金をお持ちの方は簡単に始められる。投資後進国の日本にとってはウェルカムな状況であるかもしれない。

書店に行けば、金、原油、為替、株など、山ほど投資に関する書籍、また大きくは、日本の悲観的将来(デフォルト)、楽観的将来(世界で唯一生き残る)など枚挙に暇がない。

これまで、このブログでも何度も取り上げてきたが、投資の概念は企業経営の概念に通じている。元手の資金(借財を含む)を如何に大きくするかのゲームである。

だから、難しい・・・。

私もなんだかんだでMBA在学時より約1年程度”投資”に関しては学習したが、最初に学ぶべきことは、取引の仕方、種類というより、自身のライフプランである。

特に家庭を持っていらっしゃる方は、保険、教育費、住宅費などを鑑みて、○○年後に○○円必要なので、それに準備する、というプランニングがまず必要である。

確かに、企業の退職金、年金など将来的に不透明な部分もあるが、とりあえず現在の段階でプランニングしないことには、どの程度の利子を見込んで、どの程度のリスクを許容できるかが把握できない(意外に年金などいくら受給されるかは知らないものです)。単に”節約”すればいいケースもあるのである。

このことを把握していない”投資”は単なる”博打”でしかない。

無駄に、取引手数料や程度の低い投資信託に見られる手の込んだ手数料などを支払うことはない。

さしずめ、会社員であれば、”勝たなくてはならない”投資家ではない。わからないものには手を出さないを原則に、”負けなければいい”。機関投資家とは異なり、動かなければいい、とは個人の投資家の伝家の宝刀である。動かなければ(ポジションを持っていなければ)損はない。要はどれだけ長くこの世界にいられるかである。

いずれにせよ、資産の配分については:

  • 流動性(現金、普通預金など)
  • 安全性(定期預金など)
  • 成長性(株、債券、外貨、商品、不動産投資など)
の割合は、それぞれの家族構成や給料など、様々な理由でその配分は異なってくる。最適な配分などは、その人(家族)でないとわからないものである。

とは言っても、私は、特にビジネスパーソンの方へは、生活に支障がない程度の投資はお勧めしている。なんだかんだ言っても、保険、年金は株式で運用されている面もあり、銀行では国債を購入しているので、何もしていなくとも私達は間接的には投資に関与している。

特に、一部上場企業へお勤めの方は、自社の株価はいくらで、グローバルに事業を展開している企業にお勤めの方は、為替の動向がどうで、あの地域の状況はどうで・・・など自腹を切ればよく学習する

一部上場企業でグローバルに事業を展開しながら、自社の情報、経済情勢に疎いマネジャーは注意したほうがいい。そのこと自体が影響するのではなく、投資概念がないと思われるので、取引相手にいいようにやられてしまうからである。

さらに、あなたの20代、30代の部下は、そもそも年金、退職金というものを当てにしていない。消費しない世代とも言われるが、私から言えば、それは、真っ当な経済概念である。彼ら、彼女らは、実は勉強熱心で、将来に関して、厳しく(悲観的)に捉え、その準備を始めている。ビジネススクールでも金融機関の方が多かったが、顧客(運用に関して)は意外にしっかり貯蓄した20代、30代の方が多いそうである。

彼ら、彼女らは、これまでの実績や、仕事に精通している、といった面より、ある事象(経済現象など)を自分の言葉で説明してくれる人に尊敬を抱く。

旧世代的な考えでは、”それは正しいのか?”と思わず聞いてしまうが、今後、いわゆる21世紀型は、答えもなければ、先生もいない。カンニングしようが、相談しようが、自身の表明する回答はあなたにとって正解なのである(あなたの責任において)。

そういった建設的な議論を特に好むのである。

+++++++++++++

さて、最近の株や為替の変動率も凄まじいものがあるがその下落率も凄まじい。下にはその推移を示している。

バブル以後の株価、ドル/円推移(週足:ソースはMSNマネー)*グラフに関する概略は、以下。
http://www.ilibrary.jp/charts/charts0810.html

注入した資本が、出血多量の患者の傷口を治療せず、輸血しているような感じである。やはり、かつてのスウェーデンが乗り切った方式が有効なのかもしれない、なんて思い始めてきた。詳しくは以下参照。
http://www.ohmae.biz/koblog/viewpoint/998.php

各国の政策如何では、かつて、日本が経験してきた10年が一気に押し寄せそうな気配もする。それがはっきりしないことには底は見えない。

・・・ここ5年程度は、現状維持できれば御の字ではないでしょうか。


*この記事は投資や投資に関する勧誘を意図するものではありません。
*投資の決定はご自身の判断と責任でなされますようお願いいたします。

Labels:


October 21, 2008

構図を考える

世界的に経済は後退している中、ここ5年から長ければ10年程度、日本は現状を維持することが精一杯である。が、現状を維持できるのは幸運なのかもしれない。

日本のモノづくりでは、研究開発から生産、販売まで一貫して行う垂直統合型企業が多い。これは、スマイルカーブで利益率が低い組立・生産部門でも利益が捻出できることや、製品自体が複雑化していることも挙げられる。

ただ、「以前より少しよくする」という伝統的方針のみでは、その利益率を維持することが困難になりつつある。簡単な話、これはパイを広げなければ利益が出ない仕組みだからである。

こういった時(成熟期後半など)に見られるのは、企業のみで効率化を図る、というより、その業界で効率化を図ることである。

例えば、業界に参加している企業群が垂直統合モデルであれば、研究開発から生産、販売まですべてが重複している。大よそ、研究開発や販売の重複を解消することより、組立・生産を解消することが多い。

その業界の企業は、研究開発、販売の能力を維持しつつ、生産をどこかの企業へ委託する。どこかの企業は組立・生産のみを生業にしている企業かもしれないし、それは十分に生業になる事業である。生業にしているのであれば、その業界のほとんどの生産を受託することになる。

業界がそのように動いていけば、またはそうしていけば、それに参加しない垂直統合型企業は苦しくなる。セオリーどおりであれば、生産を委託する企業は、利益率の低い生産部門を切り離なすことで、研究開発や販売へ資源を投入しやすくなる。また、受託する生産特化企業は、規模の経済が働き、生産コストを低くしていくことが出来る。

こうなれば、垂直統合型企業は、研究開発から販売まで他企業に比べて、コストパフォーマンスが低下する。

ましてや、このような動きを起せる業界では、生産にコストがかかり、技術的には差別化が困難である業界であるから、尚更である。半導体産業では、そういうことが多いのではなかろうか。

この構図を変える極端な例はデルであった。これは説明するまでもないと思う。

以前より少しよくする」は研究開発者、技術者などの従業員の賜物、構図の変更は経営陣の特権である。

・・・いずれ誰かの土地になる場所で縄張り争いをしても意味がない。そうであれば、経営的には、”協業”が賢明な選択である。

photo(c) Maco

Labels:


October 14, 2008

ビジネスは結果か?③-了-

最近の株価の変動は、それこそ数十年に一度見ることができるかどうかの現象であるが、企業経営では、グローバルに展開している企業においては、売上減少、またバランスシートの毀損など、取り組まなければならないことは多い。

そういったなかで、旧来のオールドスタイルと新たな企業文化をうまく融合させ、作り出していく行為は、今から始めたほうがいい(急進的な企業文化の改革は(古いものを新しいものへとすげ替える方法)、従業員の大半、例えば30%や50%を入れ替えないと出来ないので、まず”融合”が大切です)。

そのなかで、日本を代表する企業が、伝統的製造業であるとするならば、行なうべきは「見えざる資産」のたな卸しである。

*「見えざる資産」とは、技術やノウハウの蓄積、顧客情報の蓄積、ブランドや企業への信頼、細やかな業務をトータルにきっちりと実行できる仕組みやシステム、生き生きとした組織風土など、企業が持っている「目に見えない」資源のことである。伊丹敬之,軽部大,『見えざる資産の戦略と論理』日本経済新聞社,2004,まえがきより。
*より詳しくは、伊丹の『新・経営戦略の論理―見えざる資産のダイナミズム』,日本経済新聞社

いわゆる事業戦略論における系譜は、ポーターの”構造的な戦略論”、伊丹の”構築の戦略論”、そして”構図の戦略論”の視点である[1]。そのなかでも伊丹が表した「見えざる資産」は製造業で言えば、「工程品質の向上を支えるもので言えば、細部を含めた工程のデザイン、それを動かす現場管理者や作業者の技能、その技能を引き出す職場環境、その職場を守る人事制度、その人事制度を育む企業風土などすべてが含まれる」([1]p186)がこれをよく示している。

この概念は80年代に、日本の企業の強みのひとつとして示されたものであり、この後に、この概念を発展させ、”コア・コンピタンス”や”組織能力”に結びついていく。

この概念で最も身近な例は、シャープの液晶である。

実に長きに渡り研究、開発が続けられ、日の目を見たわけであるが、これは「液晶」と製品が素晴らしいのではなく、これを創り出すノウハウや工程、作業者のスキル、開発を育んだ姿勢もパッケージとなって素晴らしいのである(と言われている。現場担当者の苦労は計り知れませんが・・・)。

はっきり言って、あの90年代から今世紀初頭(超円高、アジア通貨危機、株安)を乗り切った、グローバルに展開する企業は、その生き残った製品を生み出す方法について胸を張ってもいいと思う。

業績が苦しい時は、何かと少しの利益を創出するために、多くの「見えざる資産」を放棄してしまうことが多い。これは、伊丹の論じるとおり、”構築”するものであるから、一旦、廃棄したり、破壊してしまうと、回復が困難となる。

・・・経済状況が悪い今こそ、企業にとって大切な大切な「見えざる資産」のたな卸しを行なってみてはどうだろうか。

<参考文献>
[1] 三品和広,『戦略不全の論理―慢性的な低収益の病からどう抜け出すか』,東洋経済新報社,2004,pp181-189.

photo(c) Maco

Labels: ,


October 12, 2008

バブル、株価、推移

最近、株価は著しく下落しております。本ブログでも度々取り上げましたが、89年バブルとその後やITバブルと比べて、どの程度の下落率で推移しているのか、以下のサイトにて少しまとめています。

http://www.ilibrary.jp/charts/charts0810.html

<追記 2010-4-8>
http://www.ilibrary.jp/charts/charts001.html

Labels:


ビジネスは結果か?②

いわゆる青い青い綺麗ごとに焦点があたり始めたのは、『エクセレント・カンパニー (Eijipress business classics)』ぐらいからである。

後には、
ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則
ビジョナリー・ピープル
と、戦略、組織構造、テクノロジーといったハード面から、だんだんに”個人”へ焦点があてられ、議論において、企業文化論の占める割合が大きくなってきている。ビジョナリーシリーズでも言及される”meaning”がキーワードになる(存在意義、労働する意味など)。





また、大きくは資本主義において、
新たなる資本主義の正体 ニューキャピタリストが社会を変える (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS) (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS)
において、新たな資本へのアプローチが試みられるなど、

ひと昔前とは、利益の源泉たる資本が変化しつつある




後に、
自滅する企業 エクセレント・カンパニーを蝕む7つの習慣病 [ウォートン経営戦略シリーズ] (ウォートン経営戦略シリーズ)
では、エクセレントカンパニーが陥りやすい習慣をまとめ、いかに社員を熱狂させるかの考察を、
熱狂する社員 企業競争力を決定するモチベーションの3要素 (ウォートン経営戦略シリーズ)』にて展開している。

ハーバードでは、
知的な未来をつくる「五つの心」 (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS)
が出版されるなど、ハードからソフトへ、というよりは、ハードもソフトも、といった状況である。

加えて、最近の経済状況から、哲学なき利益追求は敬遠される機運にある(が、ソフト重視に傾きすぎる嫌いもある)。

『エクセレント・カンパニー』では、日本企業との競争に敗れた米国企業がにわか仕立てで日本企業のものまねをするよりも身近な米国の優良企業を見習って基本に立ち返るというメッセージになっていた。これは、時代の機運に適合し、さらに、教訓が組織文化に関わる誰でもわかりやすいものであったため異例のベストセラーになった面もある。残念ながら、選定企業は2年も経たないうちに、業績不振に陥る企業が続出した。(三品和広,『戦略不全の論理―慢性的な低収益の病からどう抜け出すか』,東洋経済新報社,2004,pp14-15,趣意)

このことは、上の引用から類推されるように、ハードな面(この場合は戦略)をおろそかにした上でのソフト面ではない。

とは言っても、20年前ぐらいからのこの機運は、今回の経済状況下で成熟する。ハードもソフトも目的は、企業が利益を上げることにある。今はこの仕組みを、ソフトもこれまで実施されてきたハード同様に充実させていかなくてはならないのである。

そういったことから、一度取り組まなくてはならないことは・・・(つづく

*邦訳天国な日本ですが、欧米でよく読まれるビジネス書の邦訳は意外に少ないんです。ビジネス書の売上はベストセラーでせいぜい10万部程度ですから、書店のビジネス的には仕方ないのかもしれません。Amazonで上の書籍の原著などを確認して、レコメンデーションで他の書籍を類推する、というのもありです。

Labels: ,


October 9, 2008

ビジネスは結果か?①

外には金木犀の香りが漂い、秋の訪れを告げる中、経済は早くも長い冬将軍を迎えている。

欧米や諸外国の経済状況は、深刻であるが、幸運にも傷が浅かった日本は今が大きなチャンスでもある。流動性危機、巨大金融機関の誕生、倒産、貸し渋り剥がし、大手企業の倒産・・・まだまだ米国は深刻な状況を乗り切らなくてはならない。企業をメンテナンスする暇などない。

幸運にも(このバブル最初に余力がなく、参加できなかった)日本はそれらに比べ、状況は明るい(90年代後半、今世紀当初の状況を味わうぐらいなら・・・)。

この数年、日本は企業のメンテナンスが可能である。それは、オールドスタイルを脱することにある。もちろん、日本企業の強みで、どうしても分析しきれない”阿吽の呼吸”などはしっかり残しながらであるが・・・。

オールドスタイルとは、やたらにハード面にこだわることである。戦略、組織、テクノロジー・・・、これらも重要であるが、そのアウトプットでは、せいぜい品質競争で少しの勝利を収めることしか享受できない。その研究は品質競争に勝つためのアウトプットであるからだ。高品質と利益創出に相関性を見出すことは困難になってきている。

古くは、コスト競争時代から、品質競争を経て、現在は、高付加価値をつけるイノベーションを生み出すことが課題になっている。ご存知のように、そのイノベーションの成功確率は低いし、マネジメントはまだまだ研究の余地を残している。だが、このままのハード重視では、基本的に失敗をしない、させない、想定していない、構造である故、天才研究者、技術者、天才マーケター、販売員を雇うしかない(かといって、失敗すればfireするだろうが)。

だが、ビジネスは結果を求められる。が、この”結果”というのは、経営陣にとってはその測定系は「利益」である。従業員にとっては何だろうか?いや、企業にとって「利益」とは何だろうか?想定外に低い場合は理由を求めるが、高い場合はどうするであろうか?

企業の社会的存在価値とは当該企業ではどのように考えているのだろうか?

一見、この青い青い綺麗ごとを考えなくてはいけない機は、今熟しかけている。

おそらく、この変化は抜本的な構造改革を迫られるだろう。無節操に稼ぎ、破綻していった今回のバブルの教訓として、数年後、この危機を乗り切った欧米の体力のある企業が、真っ先に取り組むことであろう。

これは、いわゆる企業文化の変化である。日本お得意の美辞麗句が並んだ建前ではない。

この流れは、約20年前に遡る。(つづく)

Labels: ,


October 5, 2008

『あなたの職場のイヤな奴』, Robert I. Sutton

++++++++++++++++++++++++
イチローがあるインタビューに答えていた。
「嫌な奴の空気は皮膚から入る。」
++++++++++++++++++++++++

いわゆる、嫌な奴=”クソッタレ(本文のまま)”はどこにでもいる。ここでいうそれは:
目下の者を対象とし、会話を交わした後に標的となった人物が憂鬱になったり、屈辱を感じたり、やる気を失うことである(p25)。
まぁだいたい、地位のある人の目下の人に対する行為でその人物の人間性がわかるのは本書に限らないことである。

本書の著者は、スタンフォード大学教授のRobert I. Sutton である。装丁とタイトルからそうは思わないが結構真面目な書籍である。


こういったクソッタレの及ぼす影響の特徴は:
○離職率が高く、辞めるに辞めれない従業員達の士気は最低となる(p49)。
○会社のために尽くそうとという従業員の気持ちをそいでしまう(p67)。


というものであり、それは、周囲の従業員の生産性を低下させるばかりか家庭生活を蝕んでいく(p51-52趣意)。

こういったクソッタレの評価は、ヴァージニア大学のロブ・クロスの調査を引用し:
他人のエネルギーを奪う人間は、組織内での評価自ら落としている(p57)。
と帰結している。

つまり、その組織の上からも下からも全く評価されていない。時に、ワーナコのCEOであったリンダ・ウォチナーのように日頃の言動をニューヨーク・タイムズに掲載されてしまう屈辱を味わうことになることもある。

このクソッタレが全方位であればどうだろうか?
組織のヒエラルキーに関係なく上下、同僚を無差別的に軽蔑、辱しめる人物である。たとえ、これが従業員でなくお雇いのコンサルタントであっても・・・である。この場合企業はとんでもない危険を抱え込んでいる(p60-62)。

第一は訴訟である。

クソッタレ個人ではない。それも当然だが、マーキュリー社のように管理責任を問われた企業自身に巨額の賠償がのしかかかるのである。

第二に株価である。

サーナー・コーポレーションのCEOが送った恫喝的なメールがインターネット上に流出し、「奴隷制度のビジネス版」として市場の反発を買い、3日間で22%株価が下落した(事態はCEOの謝罪によりうまく処理された)(p70-71)。

これは、単なる人物評ではない。グーグルやサウスウェストなどでは、企業独自のルール化が進み、管理職に適用しない、雇用しないなど、採用と解雇においても適用されている(p87-88)。


クソッタレは何も組織内にとどまらない。クライアントでもそうである。

サウスウェストの役員、アン・ローズは出張中、空港カウンターで、サウスウェストの係員を怒鳴りつける顧客に遭遇した。悪態をつき、大声をだし、威嚇し、カウンターへ乗り出す様である。その顧客に向かって彼はこう言った。

「サウスウェスト航空の人間にそんな態度をとることはやめていただきたい。あなたがほかの航空会社を使ってくれれば、誰もがハッピーになれるはずだ。」(p108-109)

そして、別のカウンターへ連れて行き、別の航空会社のチケットを買ってやったという。

当たり前である。自社の従業員に対して、それが顧客であろうと、サプライヤーであろうと、コンサルティングであろうと、そのような態度をとる者は、絶対許すべきではない。退場してもらえば済むことである。

企業内部、周辺環境において”クソッタレ”を減少させることが発展する要因であるからである。一度腐ってしまえば終わりなのである。

偉くなったクソッタレはもっと厄介である。

「あなたはそれ(給料や待遇)に見合うだけのことをほんとうにしてるんですか?」と言ってくれる者がいないからである。たとえいても、有能な右腕が「ああいう感謝知らずな連中は、まるでなにもわかっちゃいないんですよ」と言ってくれるからである(p111-112)。

そういった姿の真実がわかるのは「業績が悪化したとき(p138)」だそうである。

重要なことは、このようなクソッタレを撲滅することであるが、それ以上に、このような現象を理解することである。なぜなら、それは、感染するからである-感情感染(モラルの欠如は病原菌のように広がる)-(p144)。こう書いている私も皆様も嫌な奴になり、負のスパイラルに火がついてしまうのである。

++++++++++++++++++++++++++++++
さて、イチローは次に何と言ったのだろうか。
「そのような時、ロッカールームからすぐに出る」
++++++++++++++++++++++++++++++

本書での内容も多くあるが、まとめると「離」である。顔を合わさない、距離を置く。よもやクソッタレが変わるなどとは期待しないことである。反撃などはしないほうがいい。それこそ、負のスパイラルである。

もうひとつは、クソッタレとは全く逆の人と密接になることである。

最後に、教授は皆様からのエピソードを期待している。ただし、その条件は以下である。
許可を受けないかぎり氏名を公表しないが、自身の著作や講演などでの引用する許可は下りたものする。

・・・意外に身近なイヤな奴。秋の夜長に付き合い方を研究してみては・・・。

*「クソッタレ」という表現は公の場での表現としては適切でないかもしれませんが、本書の特徴を出すために、あえて、本書のままで掲載しております。ご理解くださいますようお願いいたします。

<参考書籍>*記事のページは以下の書籍のものです。
Robert I. Sutton, 矢口誠訳『あなたの職場のイヤな奴』,講談社, 2008.

Labels:


October 2, 2008

W・チャン・キム他, 『ブルーオーシャン戦略』

競合企業との血みどろの戦いから、抜け出すには・・・。血みどろの戦いを”レッドオーシャン”と呼ぶのに対し、それを”ブルーオーシャン”という。

経験している方も多いと思うが、現在の競争は疲弊しきっている。この閉塞感から抜け出すことは出来ないのだろうか・・・そこにヒントを与えるのが以下の書籍である。

*上のリンクはオンライン書店ビーケーワン、amazonへは本記事の下にリンクしています。

ブルーオーシャン、また、オープン・イノベーション、イノベーションのジレンマなど学者の仕事は、企業の様相を体系的にまとめ、そこから知見を見出すことにある。上記の概念もそうである。

「これらを直接ビジネスに用い、利益が上がるのか?」

の問いは、学者に失礼なのかもしれない。そんなことは関係ないからである。サイエンス、テクノロジー分野でも同様である。その技術は儲かるのか、その発見は金になるのか?

それは、学者が聞きたいことである。学者は読み手のビジネスティーチャーではない。

さて、ブルーオーシャンの概念は、これまでセグメンテーションしてきた顧客から脱却し、当該業界が顧客として考えてなかった新たな顧客層を見出すことにある。同じゲームにしてもWiiが老人ホームで熱狂!なんてことは考えもしなかったことである。

見出したところで、企業には実現性への課題が立ちはだかる。
これまでの顧客層でないことは、販売部門は新たな対応が求められる。これまでの顧客との経験値はゼロになる。開発、設計はあらたな仕様を策定する。品質保証は、新たな顧客の想定される不具合を徹底的に検証しなければならない。

  • これまでと同じ事業部でいいのか?
  • その製品、サービスは、当該企業のブランド戦略と一致するのか?
  • 新事業的様相が濃い新製品、新サービスにおいての成功確率がかなり低いことを認識しているのか?
など問わなくてはならない課題が山積する。これらを踏まえて、Go!ならば、当該企業は邁進するほかない。
別に規模を小さくして市場試験をしてもかまわない(模倣可能性が高くなるが・・・)。

・・・とは言っても、様々な概念に触れることはとても重要なことです。

<参考書籍>*amazonへのリンクはこちらです。
●W・チャン・キム他, 『ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する (Harvard business school press)』ランダムハウス講談社, 2005.

●安部 義彦他, 『日本のブルー・オーシャン戦略 10年続く優位性を築く』ファーストプレス, 2008.

Labels: