社会人MBA-技術者編

February 24, 2009

ハイリスクだからハイリターン

投資や経営において、”リスク”は常に考慮する因子である。「大きなリスクを伴う」などで耳にする”リスク”とは、何となく馴染み深い”危険度”や”深刻度”などとは異なる意味で使用する。

”リスク”とは何だろうか?

経営や投資でいう”リスク”とは、統計での”標準偏差”の概念に近い。平たく言えば「バラツキ」である。

例えば、任意の標本で下のような分布が推測されたとする。左右それぞれの平均値は100であり、視認できるようにバラツキが異なる。
*左右のグラフの標準偏差は、それぞれ、5、17である。


標準偏差×2の範囲を考えると・・・
左)100±10
右)100±34
であり、右の方がリスクは大きい。

つまりは、「リスクが大きい」のは、何らかの分布にて(工場の場合例えば、不良率や生産効率の指標)バラツキが大きくなることを踏まえて言っているのである。

右グラフのバラツキが大きいグラフで言えば、75~140程度の値になる可能性が高くなり、例えば、140の値を望むのであれば、右グラフの方が可能性は高いだろう(同様に75になる可能性も高い)。

結局は、「リスクはバラツキ」なのである。

平均5%の成長と言っても、
4%,6%,5%の平均は、10%,-10%,15%でのそれより好まれるのである(バラツキは小さいほうが好まれる)。


・・・だから、”リスクは小さく、リターンは大きく”は至難の技なのである。


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February 15, 2009

それは偶然なのか?

(ある開発現場にて)
「これは、従来品より20%の機能向上が見込めます。」
「それは頼もしい。では、早速最終試作に取り掛かってくれ。」

やがて、試作された試作品は従来品と同等の機能であった・・・。

開発現場ではよくある話であるが、ある現場では、ほとんど起きることがない。それは、統計学の知識が豊富な職場である。

○何(どの因子)がその向上に寄与したか、
○データのn数は?
○それは有意性があるのか?
○またはいくつかの因子の組み合わせで向上しているのか?
などなど・・・

そうである、たまたまそうなったことを嫌うのである。

例えば、標本の例として、下の図を例にすると(どちらも平均は100):
●もともと平均100で、左のグラフの特徴を持つ標本が改良され120になった場合
●もともと平均100で、右のグラフの特徴を持つ標本が改良され120になった場合
では、どうだろうか?

何かそれが確からしい検証をしなければならないと思うのが普通である。



こういったことを調べるのは主に「仮説検定」といわれ、種々の統計的手段において、検定される(『ビジネス統計学【上】』では第七章、八章)。

○向上した(とされる)データの平均値に有意性はあるのか?
○バラツキは大きくなったのか?小さくなったのか?

などを検定する。

そして、例えば「有意水準5%において有意です。」などとしてアウトプットさせる。
有意水準*については、経験的には、一般的には5%、開発に関わる実験では10%、MBA時代の文献(人文、社会系)では1%が多く、特にこれでなければならない数値はない。
*受け入れられる水準は様々です。


・・・もしかしたら、そのデータは偶然かも知れません。。。


<参考資料>


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February 10, 2009

平均値の落とし穴

ファイナンスやマーケティングはMBAの代名詞みたいに用いられることが多いが、在学時、意外に苦戦するのが統計学である。

苦戦してでも我が物とするのは、統計学の出来、不出来により、後の研究の深みに差が出てしまうことを周知しているからである。

というより、研究開発者や設計者はタグチメソッド(実験計画法)や検定は多用するし、マーケターの守備範囲はアンケートから顧客選好など非常に広い。

結局、数学を根拠にしない者の理屈は「なんとなく~」でしかないのである。

よく聞く”平均値”は実はデータをよく吟味しないとわかりにくいものである。”平均値”と聞くと、感覚的には、「平均値が100ですよ」と言われると、100の人が多いのかなと思いがちであるが、下のグラフはいずれも平均値が100である。

○記事のヒストグラム(両データともn=100、平均値は100)
左のグラフでは、100周辺のデータが多そうであるが、右のグラフではよくわからない。

工場に勤務している方は、これまでの経験でよく存じておられるかもしれないが、問題のある工程などのデータを取得すると、右のグラフのように正規分布*に従わない場合が多い


工場では、安定が求められるが、安定とは、いわゆるバラツキが小さく、日々やロットの変動なども含めて、狙い値に近い品質を生産できることである。

要は、あるデータを取得し、なんでもかんでも平均値のみで評価、処理してしまうことは、何かの問題解決のヒントや重要なシグナルを見逃してしまう可能性が高いのである。

データの(標本の)分布の表現には、多くの統計量が用いられる。データによっては、中央値**や最頻値*** を含めたほうが、そのデータの様相をうまく表現している場合もある。

    **メディアン(median)、データの大きさに関してちょうど中央に当たるデータ。5つのデータであれば、3番目のデータ。
    ***モード(mode)、データのうち、度数分布において最も高い度数を示す値。最も多く現れているデータの値。
平均値に落とし穴があるというよりは、何かひとつの統計量のみを頼りにすることに落とし穴がある。

・・・データはいろいろ語ってくれてます。。。


<最頻値、中央値>
要約統計量(Wikipedia)を参照。

<お勧めの書籍>


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February 6, 2009

問題解決より優れていること。

MBAを何かに例えるなら、「パイロット」だと思う。タイムラインを鑑み、目的地へ安全に到着させる任務が、似ている気がする。

その”乗り物”を発明する起業家はこの意にそぐわないかも知れないが、右腕にはこのような任務をつかさどる人も必要であろう。

また、多くのプロジェクトチーム(特に、小集団活動やシックスシグマなどに見られる問題解決チーム)などにおけるチームリーダーを何かに例えると、「医師」ではないかと思う。病巣を発見し、的確な治療方法を提示し、処置をする。

時に、その中心者はヒーロー、ヒロインであり、絶賛されることもある。

問題の解決には、多くの因子の中で、有意差のある因子を発見し、目的に向かったカイゼン行為を積み重ねていくことが必要である。そのために、チームを教育し、分担を決め、メンバーを奮起させ、データを収集し、分析する・・・地道な作業の積み重ねが実を結ぶ。

成果を実行するための種々のネゴシエーション、プレゼンテーション、どうしても中心者は目立ってしまいがちである。


しかしながら、中心者が心がけておかなくてはならないことは、問題解決することより優れたことがあるということである(もちろん、問題解決することは優れています)。

それは、春夏秋冬を通じて、品質を維持することであったり、品質を維持するために、不良な品質へ繋がる少しの予兆を見逃さず、事前に病を防いでいることであったりする。

業務上の事故でもそうであるが、トラブルをシュートすることと同様に、事故が起きないように取り組んで、実際に起きていないこと(=予防)も評価すべきである。

やがて、低コスト、高品質が当たり前のように出来ているように評価、判断され始めると、組織の前進は停止する。それは、持ち場のそれぞれが責任範囲をシュリンクし、責任を果たそうとするからである。

・・・派手な手術(この場合は企業における問題解決行為)や先進的な行為というのは、脚光を浴びるかもしれないが、病気にならないように(事故が起こらないように)、また、小さな兆候を見逃さないなどの予防行為に勝るものではない。

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