文書では、作業のコツは伝わらない。

2010年2月21日

有意差あり!

t f B! P L
団塊の世代が多く退職し、知的資源の価値が小さくなっているのでは?という疑問に集約される議論は、技術が海外へ流出する場合も含め、よくあることである。


このブログでも、多くの事を記事にしてきたが、とりわけ、記事で時間がかかるのは、自ら得たコツ(?)を記事にする時である。


多くのビジネスパーソンの方も、作業を文書化することで悩んだ経験は多いと思う。やれと言われればやるが、それを見て、見た他の者が、自分と同じように行なう、いわゆる“再現性”まではわからない(が、大抵、これを命令する人はこれを求めます)。


結論を言えば:

文書化(マニュアル化)による再現性の期待値は極めて低い。


皮肉混じりで言えば、命令している管理職が画一的に動けていないのに、それは、無理であろう。職人が、その作業の詳細を文章にしても期待は低い。






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あるプロジェクトで、課題に対して、データの収集が積極的に行なわれた。統計に詳しいメンバーも他のプロジェクトから加わり、分析も徹底されたが、因子を特定できない。


だが、ある因子には心当たりがあった。

残念ながら、それは、オペレーターであった。あるオペレータの時には、エラーが極端に少ないのである。


次のデータ収集は、そのオペレータへ集中したことは言うまでもない。


だが、まだ因子がつかめない。

気になることは、主効果(ある一因子)より、交互作用(複合因子の組合せ)の効果が高い、ということであった。


そこで、膨大になることは、承知の上で、分析結果を踏まえ、実験計画法を実施した。結果、3因子の交互作用が、最も効果のある因子であることが判明した。

3因子の交互作用は、神のみぞ知る領域と揶揄され、めったにこれが原因であることはない程のものである。

*例えば、薬の服用を例にすると、解熱剤を服用し、胃の具合を考えて、胃薬も飲む。ここに、また新たな薬を服用すると、それぞれの薬がお互いにどのような影響を及ぼすかは、把握しにくい、ということ。


そのことを表現する最適な台詞は、そのオペレータに今日の設定をどうするかを聞いた時の回答である。


「朝から職場に来るまでに、そう思った。」


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結局は、マニュアルは、作業のほんの一部であり、コツは各作業員がつかむしかない、という当たり前のことなのである。

だから、文書では、伝えられない。


日本企業が、工場のオペレータまで、それぞれの職能―他の間接業務も含めて―同等の扱いをしていた所以である(欧米では考えにくいことですが)。


文字には文字の役割があり、すべてを伝えられるものではない。



・・・伝わらなければ価値を発揮しない情報の伝達手段は、多い方がいいに決まっています。




*本記事のイラストは、以下のサイトです。
-> dezinerfolio.com

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