『七つの資本主義』『資本主義はニヒリズムか』

2010年3月3日

書籍

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資本主義はいくつあるのか?それは何色なのか?

グローバリゼーションが進む企業では、避けては通れない質問である。日本式の「郷に入っては郷に従え」では、やや心細い感がある。

今日の記事は、一般的には、「組織管理」などでよく行なわれる“組織文化”や“多様性のマネジメント”の議論のひとつである。

現代企業における比較経営論のアプローチとして、比較文化的研究調査をもとに:

資本主義は一つではなく、国の数だけ経済システムは存在し、その形態は、それぞれの国や地域における歴史や文化により相違がある。

と、それらのシステムの特色を詳細に著した書籍が、C・ハムデン―ターナーらによる『七つの資本主義―現代企業の比較経営論』(日本経済新聞社)である。


調査は、1986年から1993年のことであるが、当時の日本を知る上で、“日本の競争上の利点”を引用してみる。

日本が堅持している独特の競争上の利点のひとつは、長期的な戦略立案にある。

(中略)日本の文化で非常に重要なのは、世代間サイクルである。年老いて引退したした人々は、代わって新しく昇進してきた者たちに知恵と知識を伝える。

同じような論理が製品についてもあてはまる。製品は市場で成熟し、やがてその売上は低下するが、その過程で次世代の製品にきわめて重要な情報を伝えずにはおかない。

成長と開発のための情報を後の世代にフィードバックするこうしたサイクルを頻繁に群発させることが長期的展望のための必要条件なのだ。

(第7章 同期化、タテ社会、時間より。改行、太字は本ブログ運営者による。)


ちょうど、この頃が日本のピークであっただろうが、うまくいっている時は、うまくいっているように映るものである。

とはいうものの、現代に照らせば、「長期的ビジョンが描けない」ことは逆説的な結果となっている。


最近の金融危機により、資本主義に関する議論は、よく目にするようになっている。そのひとつのキーワードは「ニヒリズム」(Wlipedia)であり、それは“神の死”を連想させる。

それは、おそらく、「ニヒリズムは歴史的必然*」とも言われる現代において、価値規範や道徳観が空位、欠落していることを表しているのであろう。

*『資本主義はニヒリズムか』(佐伯啓思, 三浦雅士(著), 新書館, 2009.)


それを端的に感じるのは“無差別化”であるかもしれない。詳細は専門家に譲るとして、ごく身近な例で言えば、「売上アップのために売上を上げる」など、手段が目的化していることなどがそうである。

いわゆる、利益を上げるのであれば、(お金に名前が書いていないことをいいことに)それは、顧客のものでも、従業員の懐からでも何でもよい。

労働も、作業員A、作業員Bが決められた業務を機械的に行なえばよく、ミスの多い機械は取り替えればいい。

こうなってしまえば、天井(いわゆる目的)がないので、ゴールがない。競争で言えば、レッドオーシャン(Wikipedia)である。


なんとなくではあるが、長期的な視点は欠落していくことはわかる。



・・・抜本的な特効薬はありませんが、現状を把握する上では、当該企業(組織)の歴史を紐解くことは大切です。“シャインの組織文化論**”ではありませんが、「人工物」「価値」「基本的仮定」をもとに議論してみてはどうでしょうか?



**シャインの組織文化論のレベルとしての「人工物」「価値」「基本的仮定」は、書籍でなくとも、こちらのリンクの1~2枚目に丁寧にまとめられています。理由はわかりませんが、シャインの『組織文化とリーダーシップ―リーダーは文化をどう変革するか』(ダイヤモンド社,1989.)がAmazonのマーケットプレイスで異常な高値になっていますので参考までに(本記事執筆時点での話です)。



<参考書籍>




<関連書籍>
*マネジャーの方は一読の価値ありです。

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