研究開発の創造的行為に、実験計画法やタグチメソッドは仕事をしてくれない。

2010年5月12日

統計解析

t f B! P L
ある会議にて―

「・・・で、このデータを解析したところ、有意ですので、○○因子は、この製品の機能発達には有効です。」

「つきましては、ここでは、該当資材の・・・製造方法の・・・」

と進んでいく。。。


一見、普通のようだが、確かに、(冒頭の)研究、開発陣が自らの成果の確からしさを証明するのは―数字、特に、統計的な有意性ではある。


だからと言って、統計・解析が研究にヒントを与える事とは意味が違う。


伝統的な“ものづくり”では、工場でQCが多用される。その中には、多くの統計的な手法、ひいては実験計画法などがあり、こういった工業数学が、過大評価されている嫌いがある。


統計的な検定とは、結果論であり、通常の研究開発活動とは――
  1. 仮説を立てる
  2. 仮説を検証するための実験を準備する
  3. 実験を行う
  4. 結果から仮説を検証する
  5. 議論する

が、大まかな流れであり、結果から有意性を問うことが通常であるが、その作業に携わったことのある方は、おそらく:

『検証はなにも、統計解析ばかりではなく、さらに実験を行うこともある。』
『なにもかも、いやほとんどが直接的なデータを統計解析できない。』

などと考えるであろう。


事実、検証での統計は、実験結果の一次情報というよりは、例えば、これまでの実験データと現データを比較して、有意か否かを問うなど、直接的な統計解析でないことがほとんどである。


研究行為は、仮説、検証を繰り返すことがメインなので、分析→改善、など簡単にフェーズは進まない。むしろ、分析⇔改善、とループする。


結局は、種々の議論を経て、種々の検証方法を用いて、トライアンドエラーで有効な因子にたどり着くしかない。


設計段階にもなれば、コスト、耐久性などの面から、ロバストネスが求められるため、種々の因子を鑑み、最適化を行なう。ここでは、実験計画法やタグチメソッドの出番であろう。
*因子間の交互作用を把握する時は、研究段階でも実験計画法を用いることがあります。


有効な因子をトライアンドエラーで導き出す研究開発行為、導き出された因子に、種々の生産上の因子を加え、最適化を行なう設計以降の業務―目的が違えば、手法の有効度も異なる。



多くの経営的な研究からは、ある機能発現における技術的な成功確率はかなり高いことが知られている。ならば、研究開発行為の確からしさとは、極論すれば、テーマの選定であり、その行為は実は、経営行為と結びつきが深い。


*研究開発において、実験計画法やタグチメソッドを使用することを否定しているわけではありません。研究開発行為の出口では使用しなければならない場面は多くあります。


・・・実験計画法やタグチメソッドの本領発揮は、“最適化”です。


*2024年2月続編を投稿しました。

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