“有意差がない”の周辺

2010年11月7日

統計解析

t f B! P L
あるチームが、当該課題を解決することを目的に、メンバーを人選し、ことにあたる。

そのチームは、専門的な知識、経験が集合するわけだが、データを収集し、分析を試みた結果、ある問題に対して“有意差がない”場合がある。


メンバーらは、有意性があるにせよ、ないにせよ、課題に対し、「収集すべきデータを収集し、分析を行う」といった当初のタスクは全うしているが、リーダーは、次の方向を示さなければならない。


そこで、考えられることは・・・

おそらく、人選に問題がなく、いくらかの資源も投入している程のチームが行ったのであるので、有意性のある因子を特定できなかったことは、もしかしたら、それで正解かもしれない


そもそも、課題や問題とは、製造業の場合は特にであるが、あるプロセスのアウトプット(ネジの寸法であったり、何かの材料の投入量、注入量であったり)が、管理幅や仕様の幅を超える場合、といった場合が多い。


ならば、もともとの管理幅や仕様の設定が厳しい*のかもしれない。その企業では、何らかの事情により、変更できない仕様や管理幅なのである。
* 年月の経過で、種々の条件(材料など)が変わりこのようなことが起こり得る。


犯人がいない犯人探しのパターンである。


『いや、そうは言ってもそのままでは、何らかの課題や問題は継続して発生するだろう』
とは納得度が高い指摘である。


これは、犯人がいるのに見つかっていない、と想定している。


この対処としては、単純な2つの方向性があり、問題を解決する作用を―
①当該プロジェクト内の範囲で見つけるか
②他のプロセス(プロジェクト範囲外)で作用を加えるか
である。


②の場合はプロジェクトは解散である(当初タスクは全うしたので)。

①の場合、真犯人は、そのプロジェクトの範囲にはいない。いるとすれば、考えられない様な“凡ミス**”である。
** ある計器の単なるスイッチの入れ忘れなど。よくあるのは、測定システムを確立していないなど。例えば、ある部品の納入業者測定値と自社測定値が同じ部品を測定しているはずなのに値が異なるなど。


でなければ、おそらくは、その真犯人の多くは、プロジェクトの範囲の上流に手掛かりがある。これは、伝統的な考え方で、その前の工程に遡っていくものである。

考え方を広げれば、開発設計や研究分野まで考慮にいれなければならない***。
*** 『つくれないのは○○が悪い』と悪意あるオペレーターの丸投げのことではありません。


いずれにせよ、メンバーは課題設定、データ収集、分析とタスクを全うしているが、リーダーは、課題が解決しなくてはならない立場にある。


“有意差なしは、手掛かりなし”ではなく、新たな道を踏み出し易い結果でもある。


ここで大切なことは、リーダーが上司なりに報告する際に、どう報告するのかである。


それは、プロジェクトで使用していた単位を中心にしないことである。つまりは、工場では、歩留まり、稼働率などで、これらを中心にいくら説明しても有意差がなかったのであるから…


さらに、リーダーには実務のほかに、経営、運営面が期待されている。それに応えることができる中心にすべき単位は“お金”である(まぁ~長いフリでの当たり前の話・・・すみません。。。)。


簡単には、当該問題、課題での効果金額に相当する金額の成果を、他の作用で実現できれば、リーダーの上司は納得する(せざるを得ない)。


いや、当該プロジェクトでのデータの収集においても、その収集の仕方や分析のスキームを作業へ落とし込めば、何かしらの価値のある作業となる****。
**** 同じような問題のとき、それがあれば、なにもプロジェクトを結成して・・・のような大そうなことはしなくても、教育された作業者が、そのスキームを実行するだけでいいのであれば、どれだけの金額をセーブできるだろうか。


・・・“有意差がない”の周辺は、結構、自由度が高いもので、リーダーの腕の見せ所です。


photo by Maco

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