発展する携帯型エネルギー、電池:電気製品化する自動車

2011年10月5日

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エネルギー―――原子力、火力などとは別のカデゴリーで、携帯できるエネルギーを考えると、身近な例として、乾電池、携帯電話や音楽プレーヤーに用いられるリチウムイオン電池などがある。


これらの製品では、より寿命が長いことは魅力的な品質である。ちなみに、現在、ハイブリッド車に搭載されているニッケル水素電池は乾電池のタイプに近い。

ニッケル水素電池から考えれば、リチウムイオン電池は、その容量、質量(≒軽い)において魅力的に映る。



それが、電池メーカーの手を離れ、電池や自動車での製品機能追及ばかり行う、安全性確立の経験を持たぬ組織が、リチウムイオン電池に携われば、同種の電池でもリチウム金属を用いたタイプや燃料電池が魅力的に映る(リチウムイオン電池は、その名の通り、リチウム金属は使用していない)。


こうなれば、自動車に搭載し、不幸にも大きな事故が起こり炎上などした時に(車体の変形が著しい場合)どう対処したらいいのか見当がつかない(単純に“水”をかければいいものでもない*)。

* 現行モデルは、ニッケル水素電電池なので通常の消火活動は有効です。

さらに、使用シーンにおいて、通常何時間もかけて使用するのに対し、充電が短時間で終わる(急速充電)ことは、確かに便利だが、上記の電池タイプはすべて化学電池である。

一方の反応に時間をかけ(放電)、もう一方の化学反応だけ速い(充電)とは都合が良すぎる。もともと、短時間での充電が好適なら、現行の充電地でもはじめからそうしているはずである**。

** もちろん、急速充電に関しては、電気自動車版ガソリンスタンドでは、標準化されたカートリッジタイプを電池パックとして交換する、というアイデアもある。(当たり前だが)充電に時間はかからない(急速に充電する必要がない、有人化になるが・・・)。



自動車が電気化(電池搭載型)すれば、自動車自体が、モジュール化する傾向が強い。少なくとも現在より部品点数は減少するだろう。

イノベーションの観点から、下記の書籍の第4,5章から学べることは―

モジュール化が有利なのは、顧客にとって自動車が十分に良いと考えられている状態―つまりは、顧客は従来のメーカーが行う性能の追加から得る限界効用が低減している状態―であり、破壊的な形態のこのイノベーションはローエンド型破壊***での成功の可能性が高い。

ということである。

イノベーションへの解 利益ある成長に向けて



さて、懸念の安全設計機能は向上するだろうか?


自動車は電気製品ではない。多くの電気製品では、当該製品における深刻度の中で、最も高い“人命に関わる”管理を要求することは少ない。

また、事故と共に製品機能や安全性を確保するスタイルはとりにくい(事故を教訓に品質を高めていく事)。このタイプの製品は、一台の悲惨な事故映像が、自動車、電池事業者の運命を決める場合があるからである。


だが、これらのイノベーションは、現在のハイブリッド車により、多くの経験知を獲得し続けている。自動車、電池、どちらも日本の代表する製品であり、ハイブリッドは従来の燃費効率を著しく高めることに成功してきたことも忘れてはならない事実である。




主流の用途には使えない電気自動車――主流企業でないイノベーター企業は、おそらく、電気自動車の弱点を逆手に取った市場を相手に、学習をしながら、その弱点を克服してくる可能性が高い(下記書籍第10章参照)。

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』第10章参照。


もちろん、著者もそれが何なのかはわからないと述べているが、トライアンドエラーで、社運を賭けるなどのことはせずに、実験、検証の学習スタイルを続けながら、安全性も成長していく・・・どころか、弱点も克服されていくだろう。


とても巨大な産業なので、昨今の、任天堂、ソニーのゲーム事業がソーシャルゲームの新市場型破壊***において対応できないような動きを確認しようとしても、動きが緩慢でとらえにくいかもしれない。


*** 新市場型破壊とローエンド型破壊
新市場型破壊―破壊的イノベーション(ある技術や変化に対しての対応可能性として、既存企業が対応できないイノベーション)のうちのひとつ。かつてのソニーのトランジスタ(関連製品)で真空管メーカーは対応が困難となり主役が入れ替わったのは典型例。もうひとつの形態はローエンド型破壊で、既存市場で顧客が製品の追加性能から得る限界効用が低減した際に、従来のビジネスモデルなどを変化させ、かなりの低価格でも魅力ある利益を得られるようにし、性能の高い製品に無関心の人々を顧客にしたもの。(『イノベーションへの解 利益ある成長に向けて』参照)



だが、すでに、主流市場には入らず、入れるところに入り経験知を積んでいる企業もあるだろう。逆に主流企業では、スピンオフ組織がつくられているかもしれない。



それぞれについては―――

主流企業は、製品に多額の出費をしてくれる顧客を持つが、破壊的なイノベーションに対しては、スピンオフ組織を主流企業と同じようにマネージしてしまう傾向、と同時にその組織をリードする人材の教育は苦手である(自社をつぶすにはどうしたらいいかという教育は実施しにくい)。

イノベーターは、身軽だが、学習を繰り返す資金は十分に持ちえていないし、ネットワークが惰弱である(腰を据えて挑むマーケットを見つけることは困難な仕事である)。


・・・モジュール化も問題なく操業でき、資金力があり、かつグローバルにも対応経験がある。新組織の扱いを間違わなければ・・・、破壊的なイノベーションを仕掛けるに十分な産業は、案外電池製造企業かもしれない。。。

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