社会人MBA-技術者編

June 29, 2011

変遷する技術X

イノベーション”――そもそもの語源からは、「何かを新しくすること」であり、基本的な概念は「変化すること」である。(参照 イノベーション

どちらかというと静的というより動的な感じである。これがマネジメントを困難にしているひとつかもしれない。

これまで、伝統的製造業では、特に日本型企業においては、加工貿易立国の一員として多くの成功を収めてきた。つづく円高、株価安、通貨危機に伴う余波なども乗り越えてきた。

顧客に提供する価値を高めつつ、変動費用を削減していく技術を研ぎ澄まし、高品質低価格製品とともに“カイゼン”という用語までも輸出した。

蓄積する知識は数知れず―
・・・だが、近年はこの経済環境を如何に乗り切るか、百家争鳴であろう。


従来は、従業員の地道なカイゼンが実を結んできた結果が、直接的に経営成果に結びついていた面が大きかったが、その戦術面(手法など)を過度に焦点をあて、手っ取り早く結論を得ようとする安易さが目立ち始める。


ある戦術(手法など)を紹介するインストラクターは、その数だけ、「この方法が経営成果に結びつきます」と言うだろう。

やがて、当該企業のなかで、戦術がインフレーションし、本来は、あるシステム化で共存するような手技・手法がうまく機能せず、トップ集団の意思決定は困難を極めてくる。

顧客に価値を提供することを中心に据えなくなっている状況は、競争のための競争を誘発し、新たに価値を生みにくい状況をつくってしまう。新結合(イノベーション)は減速する。


その昔―
モノづくりでは、ある製品の機能を高めていく技術Xが、財務指標に対して感度が高いものであった。外部環境も成長モード、変動費削減はお家芸であった。


現在、その技術Xは、研究や開発の機能にあるというより、分散化されつつあり、ある価値(機能・サービスなど)を顧客に届け、利益を創出する仕組みを設計していくこと自体の技術がそうなってきている。

その中で企業は何かの機能を徹底的に磨くしかない。画一的な能力の集合体より、バラエティに富んだ人的資源を獲得していくことである。


ソロー(Wikipedia)のいう「技術変化」とは、生産関数をシフトさせうる要因であり、それは、現代ではニュアンス的には“イノベーション”であろう。


・・・顧客のために価値を。成長のために変化を。利益のために設計を。


*文末のソローのくだり
・玉田俊平太, 『産学連携イノベーション―日本特許データによる実証分析』,関西学院大学出版会, 2010, 第1章を参考。
*「事業システム」と言う観点で参考になる書籍
・加護野忠男他,『事業システム戦略―事業の仕組みと競争優位』,有斐閣


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JR九州―九州新幹線全線開業に関するキャンペーンがカンヌ国際広告祭で賞を獲得したそうです。
JR九州ニュースリリース
九州横断イベント公式HP


June 22, 2011

「設計思想」(*ブログを再開します。)

3月11日に発生した東日本大地震において、被害にあわれた皆様には謹んでお見舞いを申し上げるとともに、亡くなった方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

*  *  *  *  *  *  *

記事アップを再開するにあたり、本ブログで考察する最初の記事は原発での事故に際し“設計思想”にしたいと思う(原発自体のそれではありません)。

設計思想とは、製品・サービスにおける基本概念やコンセプト、また、ある製品においても、それを構成する各技術毎の考え方(ねらいなど)のことである。


原発にせよ、何にせよ、(設計されるものは)設計当時に、顧客へ提供する価値とともに、いくつもの安全の仕掛け、何かあったときのフェイルセーフ*などを設け、万全を期しているものである。

*なんらかの装置・システムにおいて、誤操作・誤動作による障害が発生した場合、常に安全側に制御すること(フェイルセーフ;Wikipedia)。

その安全性は、製品やサービスなど、顧客に価値として提供する当該システムの機能を鑑みつつ、当該チーム、組織独特の設定を行うもので、設計者の思想といえば、おさまりはいい。

一般的に、技術者は市場へ展開する技術に際しては、当該組織内でレビューを行う。デザイン・レビューとも呼ばれるものである。その中で、設計思想は必ず公表するものである。

それは、製品の細部に至り、機能の発現ばかりでなく、寿命までの耐久性、また使用の際の安全性の設計などを実現する技術についてもそうである(多くは、各技術毎に纏められる)。

“思想”なので、明確な答えはない。反映されるとすれば、当該企業の文化であろう。


例えば―

(原発のような)何かの製品、システムがあり、(地震のような)アクシデントが起こり、電源の供給が遮断し、システムの停止を引き起こし、これによりシステムの制御が困難になり事故につながる、ということを仮定したとする。

仮に、電源の遮断から復旧までの過去のデータは―
7,5,5,8,10 時間であるとすれば、(平均、標準偏差)=(7.0、2.1)である。
ここで、何時間分の電源(=蓄電池や代替電源)を確保するだろうか。

・平均7時間なので7時間。
・過去最大の10時間。
・13.4時間(平均値7.0+標準偏差×3)
・19.7時間(平均値7.0+標準偏差×6)

これには、正解はなく、当該組織の考え方や当該システム自体の性質に左右される。

また―

この仮定によるアクシデントは、複数のアクシデントが同時に起こることを考慮していない。

アクシデントが重なるのであれば、復旧時間云々というより、代替電源の性質を原理の異なる別システムを準備しなくてはならない。

などなど―

デザイン・レビューを重ねていくうちに、製品・サービスにその組織の思想が反映されていくのである。それは“○○(企業名)らしい製品”などと市場では言われる。


“○○(企業名)らしい製品”である以上、当該組織のレベル以上のものは誕生しない。もしそうであれば、諸先輩の遺産である。


製品・サービスの特徴を決定付ける設計思想は、出来るだけ多くの構成員の各職務に繁栄させてこそ、組織外(=市場)へその価値を反映していくことができる。広い意味では、設計者の専有物ではない。

それが、当該企業の理念や文化を反映しているのであれば、操業における最大の敵は“怠惰”であろう。


設計であれ、現場であれ、毎日同じ手順を繰り返すという“退屈”、また、それに問題がないようであると必ず出現する“手抜きの誘惑”――

平凡なことを忠実に行い続けることは、才能ある人材がその才能を発揮するより困難なことである。


長期的には、『もし、この設計に関する設定、操業、もしくは意思決定に誤りがあれば、当該事業は危機的になるのではないか?』と自らの責任で考えてくれる、従業員、管理者を多く育てることである。


短期的には---すぐに確認すべきは、「ある製品・サービスの設計思想(基本概念・コンセプト)は、顧客に価値を提供することに結びついているか」ということである。


・・・設計解の品質は設計思想に依存しています。

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