社会人MBA-技術者編

August 31, 2011

問題解決チームで大切なこと―“現場を信じる”

あなたの周りにもいませんか?
日頃仕事をやらず(職務を全うせず)、口ばかり出す人。
得てしてそういう人は、問題解決型チームでは貢献度が低いことが多い。

その特徴は、将来に起こりそうなネガティブな状況に対し―“私は悪くないんだ”という証拠を残し始めるのである

この点はクレバーであって、状況がネガティブになろうとも、ポジティブになろうとも、「だから言っただろ?」と言えばいいように設計されていることである。

こういうメンバーがいれば、リーダーやその管理者は、残念ではあるが、チームから離れてもらうことを考えなければならない(フリーライダー、腐ったリンゴ効果参照)。


そもそも、当該チームの結成は、問題解決であり、例えばリーダーは、当該課題に対して必要だと考える資源を集める。

その資源とは、言うまでもなく、人、モノ、金、情報であるが、人に関しては、“能力”的な面を重視するであろう。―分析力が高い、○○の専門家、○○法に詳しい、縁の下の力持ちである、など。

ということは、リーダーは、各種能力の集合に対して、基本的なことを把握していればよく、その役目としては、メンバーの能力を発揮し易いように環境を整える、もしくは、メンバーを信じるしかない

職務を全うしない、アリバイ作りのうまいメンバーがいては、チーム全体のモチベーションが落ちてしまうのである。

リーダーも何かしらの専門家であることがあるかもしれないが、リーダーが何でもできるより、チームが育つ方が対処できる案件が多くなるので当該組織にも好適である。

メンバーが持ち寄る情報に対して、過剰にその正当性や確認を行っていれば、そのプロジェクトはリーダーの成長のスピードでしか進まない。リーダーにその専門性がなければ、リーダーがその専門分野の基本資質を習得するまで、メンバーが教育しなければならないからである。


「ダメならどうするんだ?」

とはよく言われることだが、多くのビジネス課題に対して、大よそ、解決策は1つであることは稀である。大抵、最善策と思われる策には代替策がある。


「戦略的であれ」とは、いくつかの選択肢を持つことと解釈することも出来る(戦略は立案、選択するものなので)。

そういった全体を見据えながらことを進めていくことがリーダーの責務であり、専門性の高いことなど当該リーダーの専門以外のことは、メンバーとチームの目的を共有したら、あとは信じるしかない。


あいつが出来なければ仕方ない・・・のである。


・・・そういうチームは、古き良き日本の製造業のカイゼンチームではなく、ビジネスチームのお手本です。


August 24, 2011

設計者はマニュアルの中に閉じこもっていけない。

よく言われることだが―『実験室に閉じこもるな』とは、現場を知らない研究者や設計者を生まないための教訓である*。

*ここでの“設計”とは、典型的に電機業界のそれを指しています。


そういう時代も確かにあった。上記の言葉は、日本の現場がまだまだ元気な時代―『俺達が生産して利益を得ているんだ!』との気概を持つ現場オペレーターが、当時の電機業界での花形部署、設計部へ配属された新人や若い人への発破であった(設計は一人前になるには10年かかると言われた)。


だが、今ではそういう人も少なくなったことだろう。


そういった意味では、現場力はマニュアルの中に閉じ込められている。マニュアルを作った人がいる間はいいが、残念ながら、現場の高給オペレーターは真っ先にリストラされ、その後を引き継いだ給料の低い新人や流動性の高いオペレーターは、マニュアルを守ることに専心してしまう。

設計行為を行うにしても、製品・サービスが長年大きな事故や問題がなければ、創造性が“仕様書”の中に閉じ込められてしまう。


○Aは▲▲±□□℃、Bは△△±□□r/min、これを○○min続けて・・・


仕様書(というマニュアル)は、何らかの仮説&検証がなされて出来たもので、成果の面では、氷山の一角である。過去の設計者の遺物も多くある。種々の事情で変えてはいけない設定もあれば、少し変えるだけで事故につながるような地雷もある。

皆、製品・サービス機能に関して、事故は起こしたくない。それが続いていけば、いつの間にかマニュアルを守ればいいのだ、ということに専心してしまい、手段が目的化してしまう。

ならば、いくつもの事故を起こせば、その都度、対策を立て、製品・サービスは成長していくのだが、そうはいかない。


だから、事故の発生確率を減少したければ、実験室で事故を発生させればいいのである(もちろん、安全性を考慮した実験で)。

それは、マニュアルで規定されていることは無視した大胆な薬品の添加量、混合時間、方法など、一見、お遊びに思えるかもしれないが、設計者の基本は“なぜか?”である。

どうして、この規定なのか、この添加量なのか、入れすぎたらどうなのか?


現場の“なぜなぜ”は管理に向かうが、設計の“なぜなぜ”は原理に向かう。


―例えば、添加量について
『◎◎±□□kgでなければならない』と言われるより
『△△kgまでなら事故にならない(or ●●kg添加しなければ、効果を発現しない)』の方が、もしかしたら、生産現場や品質管理部門では理解し易いかもしれない。


一見、お遊びのような業務に思えるかもしれないが、そのような経験を有している人は非常時に強い。(残念ではあるが)事故が発生してしまった場合の多くは、マニュアルの外側で何かが発生していたり、過剰な安全域の組合せが事故の原因となっていることが多いからである。


市場で異常事態を起こさないように、実験室で異常事態を起こしながら設計していくことが、顧客に迷惑をかけない価値を提供できる大きな要因である。


・・・市場環境を再現するのであれば、実験室を出なくていい。マニュアルの中にさえ、閉じこもらなければそれでいい。

Labels:


August 18, 2011

測定システムの確立―地道なこの作業が長期的にコストを低減する

『コンマ何秒の短縮化が勝負なんだ!』

(どのような場面かはわからないが)一生懸命に何かしらをカイゼンしている機会があったとする。いろいろ何かを試しているようだ。

このカイゼンのポイントは、「コンマ何秒」かの短縮であるが、管理者自身がそれをストップウォッチを使って計測しているとすれば・・・(設定が曖昧ですみません。。。)

このカイゼンは成功しない可能性の方が高い。成功すれば、それは管理者の手柄ではなく、作業者の手柄である。

なぜなら、「コンマ何秒」を競う測定で、管理者がストップウォッチで計測している場合の精度はせいぜい±0.1~0.2秒(目で作業を確認し、指に命令が伝わるまでの時間)、さらに、その管理者は同じ作業を計測しても同じ時間を計測できるかの確認をしていないからである。
(3.00秒きっちりで止めれるか、なんてよく暇つぶしにやりましたよね。)

誤差だらけの効果測定で有意性を有するのは、トライする前から結果がわかるような劇的な変化しかない。

ツッコミどころもありますが、あくまで、今日の話の導入のための例ですので・・・


○○法、△△メソッド、■■検定

何かしらのデータを取り扱う際、フォーカスされるのは分析改善策であることが多い。


確かに、数学的な素養を要することや、ある課題、問題、また仮説に対し、適切な数学的処理を施し、結果を吟味する様子に焦点が合わされることは仕方がないかもしれない(これはこれで素晴らしい技能ですので)。


しかしながら、最も大切なことは、データの取得なのである。

製造業における生産性を高める代表的なプロジェクトにおいて、問題の6割弱は、測定システムの惰弱さを解決することで終了する。

どうしても、その後の(データ取得後の)問題に大きな影響を与える決定的な因子の導出、因子間の距離を定義する分類、目的の変数をうまく説明する回帰式、また、種々の検定による有意な因子の導出などに目を奪われがちだが、それもこれもデータがきっちり測定されていればの分析である。


ほとんどの企業において、いわゆる科学的な真値は必要ないと言っても過言ではない。

だから、部品のある寸法などは、決まった測定方法で1.0cm、それがスペックを満たしていれば、それでよい。

混乱の元になるのは―

①測定者、測定器により寸法が違う
②同じ測定者、測定器で何回か測定すれば値が違う

であり、①、②それぞれ、再現性、反復性を元に当該測定法の有効性をテストしなければならない(一般的には、ゲージR&R*と呼ばれる)。

*一般的な統計ソフトには、この機能を有しているものが多い。エクセルを使ったフリーソフトでは、このサイト(saekit@Vector)、トップページ中頃の[ソフトウェア][ソフト一覧]ページ内に「ゲージR&R」を公開してくれています。

田中さんと佐藤さん(組立業者とサプライヤー間でも同様)が同じ部品の寸法を測って、値が異なれば問題であるし、ある測定器で測定する度に値が異なっても困る、という単純なことが問題となっているのである。

電子天秤など、定期的に決まった質量のいくつかを測定し、検定を行っているような測定器では、少ないかもしれないが・・・。


結局は、どのような測定であっても、粘り強く、その測定システムを構築していくことが大切である。

その仕組みがあるからこそ、新人でもベテランでも、異常を検知できる。

検知力が高まり、僅かな異常でさえ検知できる仕組みであれば、データ取得期間、分析次第では、異常の発生率を低下させることが可能になる。それは、故障率を低下させることにつながっていく。

そういう状態であれば、仮に故障が発生したとしても影響する範囲が小さいため、トラブルシュートにかかる費用、時間が少なくて済む。


特効薬を探す管理者は多いが、実は、こういった地道な取り組みが隠れたコストダウンの最良の薬なのである。


・・・データ自体が豊富な量を誇ろうとも、測定システムが整っていない状況でのデータでは、天才分析者が分析しても答えは見出せないものである。


Photo by Maco


<関連記事>
パーセントの使いどころ
相関関係と因果関係
データのズレ―それは、測定器の違いです。

<参考までに>
データを分析、集計する際の三原則
相関分析について
回帰分析をエクセルで行う
正規性検定→F検定→t検定

Labels: ,


August 10, 2011

「論理的」な思考の習得に読む書籍。

資料作成やプレゼンテーション―そもそも饒舌な人の方が少ないが、業務上においては、上手くなる必要というよりは、作成する(配布する)書類の方が大切である(もちろん、別の場面では、プレゼンテーション自体が大切なこともあります)。

言葉は空気に消えるが、資料はファイルに残るからである。


理想の上では、ある一つのテーマのプレゼンテーションがあれば、それに伴う報告書も作成することがいいが、実際はそれほど余裕がなかったり、業務手順があったりなどで、結局、報告書的な資料とプレゼンの中間の資料をパワーポイントで作成する。

業務・業態により異なるので何とも言えないことの方が多いが、聞くに堪えない、見るに混乱する共通の特徴は、リファレンスが曖昧なのと同様に、プレゼンや資料に一貫したロジックがない場合である。

典型的な例は、オーディエンスとの不一致で、技術者が、専門職以外のオーディエンスを相手にする場合に、専門職の間で使用するチャートや資料を用いてプレゼンする場合などがある。

こういったことは、入社して何年か経過し、周囲を見る余裕が出てきた頃に慣れてくるように思うかもしれないが、必ずしも、あなたの周囲がそのお手本となる実力を備えているかどうかはわからない

規模の大きな企業でも、ケイレツやグループが共有する教育の中に入っているかもしれないが、やはり、上司は、直近の業務に関連するスキルアップカリキュラムを進めるかもしれない。


ただ、この分野は、習ったからと言って頭が論理的になることはなく、独学が有効な分野であり、目を向ければ、書籍も充実している。



このブログでも何度も登場したが、(学術的という意味合いではなく)仕事上での“論理”を学ぶ良書は―

バーバラ ミント、『考える技術・書く技術』、
山崎康司、『入門 考える技術・書く技術


ミントの方は、原著が日本人ではないため、文化的な背景を把握しにくいことは差し置いても、ミーハーではあるが、代表的な書籍である。


また、照屋華子、『ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル

も読み易い。

とかく、このような話題の場合は、プレゼン資料のデザインやチャートの作成などテクニカルな部分をフィーチャーした書籍が散見されるが、基本は、学習者の習得に時間がかかり、明日の会議に間に合わない「論理的な思考」の習得である。


ただ、テクニカルな書籍は、その例などを眺めていているだけでも参考になることが多く、ジーン ゼラズニー、『マッキンゼー流図解の技術』、

ドナ・ウォン、『ウォールストリート・ジャーナル式図解表現のルール

は、目にいい。こういうものは、周囲にお手本になる人がいなければ、「どのようなチャートが伝えたいメッセージに効果的か」など、どこかでそれを見る機会をつくることが有効である。


最近顕著なペーパーレスにしていく傾向と文書をファイリングして保存していかなければならない業務手順は、作成する資料が報告書とプレゼンテーション資料を足して2で割ったような構成となり、また、カラーインクの節約、また白黒にも耐えうるためのシンプルな色使いなど、プレゼンテーター泣かせで、(注)や(添付参考資料参考)などの項目がやたらに増加している場合もあるのではないだろうか。


が、顧客向けなどの場合は上記の制約は緩和され、
ガー・レイノルズ、『プレゼンテーションzen

は、興味深い一冊となる。


・・・分かる人にはバレるものです。あなたの資料が積重ねられて作成されたものか、昨日一晩で作成したものなのか・・・。

Labels:


August 3, 2011

過度の手順化、マニュアル化は歪な排他性を生む

(匠の世界を除く)ものづくりに“管理”は避けられない。それは、顧客(または後工程)の要望によるもので、信用でもある。


作業的には、管理に伴い、作業や業務手順など多くのことを文書化しなければならない。組織において、必然性の高いこの行為の落とし穴は―

①ノウハウなど「すべてのことを手順には記載できない」こと
決められたルールが教条的になり、例えば、手順にない“ファインプレー”を行っても、手順にない行為を行ったほうが問題視されるといった歪な排他性を生んでしまうこと(≒創造的な行為は受け付けない)

が挙げられる。

管理者が注意をしなければならない上記のシグナルは、“勤務評定”の際に感じ取ることができるかもしれない。つまりは、(部下は)給料が下がりたくないので、自らの力量の70~80%程度の業務において手順に従い確実に行うことで達成できるありきたりな目標に落とし込んでいる。

ルールにないことをしない傾向なので創造性に欠ける組織となってしまう。

こういった症状が進んでいけば、顧客に届ける製品・サービスの価値は、当該組織の都合のいい基準に無理やりに押し込められてしまう。


あくまで、教条的に成りうるものは、“顧客に届ける価値を常に考える”ことである。それをどのような品質で、どのような方法で届けるのかが、企業の営利的努力である。


こういった組織での経営者の課題は―

当該組織のために、メンバー自らが、自身に何ができるかを問い、問題解決へ向けて動き始めるチームを1つでもつくることである(マニュアルにしばられない)。

大きな事故が起こってからでは遅い。

事故が起きないように仕組みを構築することも大切ではあるが(事故は必ず起きてしまうものなので)、大きな事故を回避する出来うる限りの対策を講じ、起きてしまった小さな事故を教訓として、製品・サービスの安全性を成長させていく仕組みづくりも同様に大切である。それは管理者の仕事である。


・・・多くの問題、課題は想定外ですから、想定外の問題に対してのマニュアルの適用はかなり限定的です。